武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

南インド・ケララ州紀行(2026年4月3日~13日) 日記

(5日目)南インド・ケララ州紀行

投稿日:2026年4月15日 更新日:

ケララ州に来て、あの独特なヒンドゥーの空気があまり感じられなかったんですが、今朝、トリシェール(Thrissur)からバスで向かったグルヴァヨール(Guruvayoor)は濃密なヒンドゥー世界に包まれていました。

ここは維持の神ヴィシュヌの化身クリシュナを祀る寺院があり、インド有数の聖地らしいです。

参道には土産物店やヒンドゥー関連グッズの店が軒を並べ、続々と信者が巡礼に来ています。

拝観チケットを求める人たちのオーラに気圧され、しばし立ち尽くしてしまった。

でも、他の聖地に比べてどこかあか抜けてます。

クリーンなケララ州だからでしょうか。

ダメ元でチケットカウンターの列に並んでいると、警備員が来て英語で訊いてきました。

「あんた、ヒンドゥー教徒?」

「ちゃいます」

「ほんなら入れませんわ、残念ですな」

やっぱり。

でも、ここでさらにプッシュしました。

現地語のマラヤーラム語に翻訳したスマホのメッセージを見せました。

「この寺院を参拝するため、はるばる日本から来ましてん」

アカンなぁ、虚言を吐いてしもうて〜(汗)

もちろんダメでした。

〈ウソ言いな。ちゃんと顔に描いたあるわ〉

そんな表情でしたわ。

参拝は断念し、寺院の周りを散策すると、ケララ州の民族舞踊が披露されていました。

踊り子はティーンエイジャーでしょうか、なかなかダイナミックで、見惚れてしまった!

その後、寺院に隣接する沐浴池の端に腰掛けようとしたら、背後からサリー姿のおばちゃんに呼び止められました。

「アカン、アカン、入られへんで。あんた、ちゃんと表示を見たんかいな」

マラヤーラム語でしたが、そんな感じでしたわ。

確かに表示板に「異教徒の立ち入りを禁ずる」と英語で記されていました。

沐浴池もアカンのか⋯⋯。

うーん、厳格すぎますな。

お腹も減ってきたし、ランチにしよう〜と大衆食堂に飛び込み、南インド式定食「ミールス(Meals)」をオーダーしました。

野菜だけの体に優しい料理です。

本来はバナナの葉の上に食べ物が並んでいるんですが、ここは巡礼者が多く、バナナの葉では追いつかないのでしょうね。

お代金は日本円で90ルピー(約150円)也。

日本から来たと店主に言うと、「長いことやってるけど、日本人初めてやわ」(片言のイングリッシュ)。

そう言えば、こちらに来て5日目になりますが、まだ日本人には1人も出会っていないし、白人観光客も皆無。

まぁ、ぼくの旅はいつもこんな感じかな〜

   ☆    ☆    ☆    ☆

ランチを取った大衆食堂で、店主のおっちゃんから耳寄りな情報を聞きました。

「近郊にゾウをいっぱい飼うてるとこありまっせ」

えっ!

場所を教えてもらい、食後、さっそくリクシャーで向かいました。

10分ほどで到着。

「グルヴァヨール・デヴァスウォン・エレファント・サンクチュアリー」という動物園みたいなところでした。

入園(20ルピー、約34円)すると、林の中、あちこちにゾウさんがいてました。

柵なしでゾウを目の前で見られるなんて!

タイやスリランカでもよく似たところがありましたが、こちらの方がはるかに規模がでっかい。

その数、何と約60頭もいるんですから!

世界最大のゾウ園らしいです。

みな、おとなしい。

鳴き声も聞こえない。

これらのゾウはグルヴァーヨール寺院が所有しており、ヒンドゥー教の祭りで動員されるとか。

昨今、儀礼で使われるゾウに対し、インド国内で「動物虐待やないか!?」という声が上がっているそうです。

ホンマに虐待なのか、いっぺんゾウさんにちゃんと訊かなあきませんな。

   ☆    ☆    ☆    ☆

聖地グルヴァヨールからバスでトリシェールへ戻り、夕方、考古学博物館を見学しました。

ケララ州の古代がよくわかりました。

見終ってから、見学者の女性に記念写真を撮ってもらいました。

そのあと街に出ると、あら、不思議??

車がビュンビュン行き交っていた道路に全く車が走っていない!!

えっ!

通行人に訊くと、「選挙活動で道路が閉鎖されてますねん」。

この道路は、大阪で言えば、メインストーリートの御堂筋みたいなところ。

選挙活動のため、その一部を閉鎖するとは……。

グーグルで調べると、9日、ケララ州やタミール・ナドゥ州など南インドで州議会選挙があると記されていました。

なになに……、日本の外務省海外安全ホームページにはこんな記載が。

「昨年9月、選挙集会で群衆が将棋倒しになり、41名が死亡、100名以上が負傷した事案があるので、くれぐれも集会には近づかないように」

なるほど、やたら警察官の姿が多いと思った。

しばらくすると、強烈なマイク音が聞こえてきて、その方向に歩を進めたら、赤い旗が乱立し、大勢の支持者が何やら政党のPRソングを熱唱し、えらい盛り上がってました。

日本の選挙活動とは違って、めちゃめちゃ熱い、熱い。

ちょっぴり記者根性が出て、スマホで撮影しようと一歩踏み出したら、「アカン、アカン。離れなはれ!」と背後から肩を捕まれました。

いかつい警察官でしたわ。

その夜、お酒を飲みにバーに出向くと、どこも休業。

どうやら口論や喧嘩の防止策みたい。

ありゃ〜(涙)

ホテルに戻り、テレビを付けると、イラン戦争と選挙を交互に報じていました。

ケララ州の人口は、ポーランドと同じ約3500万人。

州とはいえ、国みたいなので、実質は総選挙かな。

ホンマ、政治意識の高い土地柄ですわ。

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。