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1月 05

今年最初の映画紹介~アキ・アウリスマキ監督の新作『希望のかなた』

庶民の哀歓を情感込めて描いてきたアキ・カウリスマキ監督。

このフィンランドの名匠が難民問題で揺れ動く欧州の現状にメスを入れた。

といっても社会派映画ではない。

希望の光を当てる珠玉の人間ドラマだ。

© SPUTNIK OY, 2017

シリア難民の青年カーリド(シェルワン・ハジ)が貨物船にもぐり込んで首都ヘルシンキにやって来る。

石炭の山から煤まみれになって現れる冒頭が物語の行く末を暗示する。

両親を空爆で亡くし、生き別れた妹との再会をひたすら願う。

未知の世界で彷徨う子羊のような存在だが、根はたくましい。

そんな主人公に手を差し伸べるのが中年男のヴィクストロム(サカリ・クオスマネン)。

酒浸りの妻と別れ、衣服の行商からレストラン経営者に転身していた。

不法滞在者と人生のリセットを図る男。

一度、殴り合ってから青年をレストランに雇い入れる唐突な展開が妙におかしい。

店を寿司屋に変え、大失敗をやらかす場面は爆笑モノだった。

© SPUTNIK OY, 2017

カウリスマキ監督はどこまでも2人に寄り添い、優しい眼差しを注ぐ。

カーリドがロマの物乞いにお金を恵むシーンはとりわけ秀逸。

セリフを極力削ぎ落とした、いつもの静謐な映像がいっそう冴えわたる。

© SPUTNIK OY, 2017

ただ、本作はやや様相が異なる。

収容施設の様子や難民を襲う極右青年など、これまで触れていなかった厳しい現実を容赦なく突きつけていたから。

押し寄せる難民に対し、欧州では二者択一が迫られている。

紛争の犠牲者として受け入れるか、それとも自国の生活や文化を脅かすよそ者として排除するか。

社会的弱者である難民の人間性と人権が失われている状況に監督は深い憂慮と危惧を抱く。

今こそ寛容さが必要。

全編、そのメッセージが込められていた。

ラストで見せた青年の笑顔が素晴らしい。

希望を持てる年になりますように。

1時間38分

★★★★(見逃せない)

☆1月6日(土)~シネ・リーブル梅田、20日(土)~京都シネマ、27日(土)~元町映画館  

日本経済新聞夕刊に2018年1月5日に掲載。許可のない転載は禁じます)

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