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7月 07

夫婦で地道な反ナチ抵抗活動~『ヒトラーへの285枚に葉書』

ミュンヘン大学での白バラ抵抗運動、ヒトラー暗殺未遂事件……。

第二次大戦中、ドイツ国内での反ナチ活動を題材にした映画が少なからず作られてきた。

その中で、市井の民を主人公にした本作は異色作といえよう。

© X Filme Creative Pool GmbH / Master Movies / Alone in Berlin Ltd / Pathé Production / Buffalo Films 2016

首都ベルリンで暮らす職工夫婦による国家反逆事件。

2010年に原作小説が英訳され、全世界で話題を呼んだ。

その流れで英語劇になったが、やはりドイツ語で撮ってほしかった。

© X Filme Creative Pool GmbH / Master Movies / Alone in Berlin Ltd / Pathé Production / Buffalo Films 2016

1940年6月、オットーとアンナの夫婦の元に出征した1人息子の戦死通知が届く。

たった1枚の無情な紙入れ……。

人間の尊厳が全く感じられない。

それがオットーの怒りを駆り立てた。

「総統は私の息子を殺した。あなたの息子も殺されるだろう」

こんなメッセージを記したカードを人目のつく場所に置いた。

これを機にヒトラーを告発する内容へとエスカレート。

元々はわが子への愛情と贖罪から発した行動。

その地道な活動は約2年間も続き、市内各所に置かれたメッセージカードは285枚に達した。

© X Filme Creative Pool GmbH / Master Movies / Alone in Berlin Ltd / Pathé Production / Buffalo Films 2016

組織的な抵抗運動と睨んでいたゲシュタポ(秘密警察)の担当警部(ダニエル・ブリュール)が捜査方針を転換させてからの動きが実にスリリング。

サスペンス映画としても観させる。

夫婦が住むアパートには反体制的な判事、身を隠すユダヤ人女性、筋金入りのナチス党員、密告者らが暮らしている。

まさに当時のドイツ社会の縮図だ。

© X Filme Creative Pool GmbH / Master Movies / Alone in Berlin Ltd / Pathé Production / Buffalo Films 2016

英語劇なので、ブレンダン・グリーソン(アイルランド人)とエマ・トンプソン(英国人)という外国人俳優を主演に起用した。

しかし共に超演技派とあって、違和感を覚えなかった。

© X Filme Creative Pool GmbH / Master Movies / Alone in Berlin Ltd / Pathé Production / Buffalo Films 2016

スイス人のヴァンサン・ペルース監督は畏敬の念を持って勇気ある夫婦の姿を映像に再現させた。

こういう実話は絶対に風化させてはならないと強く思った。

1時間43分

★★★★(見逃せない)

☆7月8日(土)シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、7且29日(土)京都シネマ

(日本経済新聞夕刊に2017年7月7日に掲載。許可のない転載は禁じます)

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