あの4人が帰ってきた!
英国北部スコットランドを舞台に鮮烈な青春群像を描いた『トレインスポッティング』(1996年)の続編。
質的に前作よりもグレードアップしている。
ピカレスク(悪漢)映画の代表作になるだろう。
薬物漬けの4人組が闇取引で得た大金を仲間の1人レントンが持ち逃げした。
1作目のこの結末から20年後、オランダで会計士になっていた彼が悄然と故郷に戻ってくる。
レントンに扮したイアン・マクレガーをはじめ前作と同じ俳優が4人を演じる。
スタッフも同じだ。
壮年になっても、彼らはパッとせず、相変わらず社会の落ちこぼれ。
そこが映画の〈芯〉になっている。
シック・ボーイ(ジョニー・リー・ミラー)は売春やゆすりで稼ぐ。
ジャンキーのスパッド(ユエン・ブレムナー)は家族から愛想をつかされ、孤独に苦しむ。
レントンは起業を図るも、うまくいかず、失意の淵に沈む。
みな空回りばかり。
そんな3人に比べ、殺人罪で服役中のベグビーだけは異常なほどにエネルギッシュだ。
レントンへの復讐に燃える激情的な暴力男に扮したロバート・カーライルの煮えたぎる演技は圧巻の一言に尽きる。
エディンバラの街を疾駆した青春時代の一コマを随所に挿入し、郷愁を添えて時代の変遷を意識させる。
その一方で、シュールな映像でスタイリッシュな味をかもし出す。
軽快なテンポも健在。
ダニー・ボイル監督の職人肌的な演出が冴える。
女性はたくましくなっているのに、4人はいつまでも青年のまま。
しかし物事を見る目が多少なりとも養われた。
それを生かし、再生を求めて始動するひたむきな姿を活写する。
だからこそ爽やかに感じるのだ。
彼らの今後の行く末はいかに?
ここまで来たら、20年後の熟年期に三度、同じ俳優を使って第3弾を撮ってほしい。
1時間57分
★★★★★(今年有数の傑作)
☆全国で公開中
(日本経済新聞夕刊に2017年4月14日に掲載。許可のない転載は禁じます)