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3月 17

ケン・ローチ監督の最新作『わたしは、ダニエル・ブレイク』

© Sixteen Tyne Limited, Why Not Produc@ons, Wild Bunch, Les Films du Fleuve,Bri@sh Broadcas@ng Corpora@on, France 2 Cinéma and The Bri@sh Film Ins@tute 2016

社会派の名匠ケン・ローチ監督の〈怒り〉が伝わる入魂の一作。

 

社会的弱者に寄り添う姿勢は揺るがない。

 

本作ではセーフティーネットが機能していない現状を如実にあぶり出す。

 

昨年のカンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)受賞作。

© Sixteen Tyne Limited, Why Not Produc@ons, Wild Bunch, Les Films du Fleuve,Bri@sh Broadcas@ng Corpora@on, France 2 Cinéma and The Bri@sh Film Ins@tute 2016

英国の地方都市で暮らすブレイク(デイヴ・ジョーンズ)は腕の立つ59歳の大工。

 

妻を亡くし、独居生活をしている。

 

頑固そうだが、非常に実直な男だ。

 

心臓発作で仕事ができなくなり、国から雇用手当をもらっている。

 

しかし就労可能と審査された途端、手当てが打ち切られ、求職活動を強いられる。

 

といっても働き口がない。

 

精一杯、行動に移すも、複雑な手続きと役所の官僚的な対応に全て阻まれる。

 

職業安定所ではパソコンで登録できず、右往左往。

 

デジタルに不慣れな者ははじき出される。

 

まさに人間疎外。

 

もはやブラック・コメディーの域だ。

 

そんな彼が2人の子を抱え、日々の生活に困窮するシングルマザーのケイティ(ヘイリー・スクワイアーズ)に手を差し伸べる。

© Sixteen Tyne Limited, Why Not Produc@ons, Wild Bunch, Les Films du Fleuve,Bri@sh Broadcas@ng Corpora@on, France 2 Cinéma and The Bri@sh Film Ins@tute 2016

 © Sixteen Tyne Limited, Why Not Produc@ons, Wild Bunch, Les Films du Fleuve,Bri@sh Broadcas@ng Corpora@on, France 2 Cinéma and The Bri@sh Film Ins@tute 2016


自身、厳しい状況にあるのに……。

 

慈愛の精神と優しさに胸が締めつけられる。

 

彼らは必死になって生き抜いている。

 

しかも能力があるのに生かされず、空回りばかり。

 

それを自己責任で済ませていいのか。

 

そこをローチ監督はぐいぐい突いてくる。

 

80歳の監督は前作『ジミー、野を駆ける伝説』(2014)で引退表明したが、この問題は全世界共通のものと受け止め、使命感を持って臨んだ。

 

確かに熱い意気込みが感じられる。

 

ブレイクが放った言葉が脳裏から離れない。

 © Sixteen Tyne Limited, Why Not Produc@ons, Wild Bunch, Les Films du Fleuve,Bri@sh Broadcas@ng Corpora@on, France 2 Cinéma and The Bri@sh Film Ins@tute 2016

 

「当たり前の権利がほしいだけ。私はそれ以上でも、それ以下でもない。人間だ」

 

これぞ魂の叫び声。

 

市井の人を描かせたら、この監督の右に出る人はいない。

 

改めてそう実感した。

 

1時間40分

 

★★★★(見逃せない)

 

☆18日からシネ・リーブル梅田ほか全国ロードショー

 

(日本経済新聞夕刊に2017年3月17日に掲載。許可のない転載は禁じます)

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