この手の映画はなぜか大阪が多い。
何でやねん?
あんまり「色メガネ」で見やんといてと言いたいけれど、これ、東京を舞台にしたら面白さが半減します~(^^;)
大阪やからこそ、物語が生きています!!
ちょっと複雑な気分です~(笑)
まぁ、気軽に映画エッセーに目を通してください。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
金持ちの高齢男性の後妻となり、資産を奪う結婚詐欺。
いわゆる「後妻業」にメスを入れた。
といっても本格的な社会派映画ではない。
金欲に目が眩む人物の愚かしい営みをブラックコメディー風に描き切った。
全編、大阪が舞台。
「武内小夜子、63歳。好きなことは読書と夜空を見上げること。私、尽くすタイプやと思います」
婚活パーティーで控え目に自己紹介する主人公。
可愛いお色気で男連中を魅了する彼女は名うての結婚詐欺師である。
高齢化社会、孤立化社会に咲いた〈あだ花〉……。
怪しげな結婚相談所の所長、柏木(豊川悦司)と共謀し、次々とターゲットを射止めていく。
その過程で小悪魔どころか、本物の悪魔よりも怖い冷徹な小夜子の素性が浮き彫りになる。
この手の役柄を演じさせれば、大竹しのぶの右に出る人はいない。
まさに独断場。
東京人ながら、大阪弁をほぼ完璧に操り、弾けんばかりのエネルギーを映像にぶつけていた。
大阪生まれの豊川との濃密なやり取りが事のほか面白い。
9番目の夫(津川雅彦)の娘、朋美(尾野真千子)が不審に思い、私立探偵(永瀬正敏)を雇って完全犯罪を続ける2人の前に立ちはだかる。
この探偵の胡散臭さが独特なスパイスとなり、ドラマがさらに煮えたぎる。
焼き肉屋での小夜子と朋美の“一騎打ち”は見ごたえ満点。
気の強い女性同士の凄まじい喧嘩を長回しで捉え、観る者をたじろがせてしまう。
登場人物がみなひと癖もふた癖もあり、毒気をまき散らす。
決して上品な物語ではないが、とことん本音をさらけ出すところが大阪の風土とマッチしていた。
大阪在住の作家、黒川博行の原作を鶴橋康夫監督がシャープな演出で映画化した。
こんなアウトロー映画にはこってり風味がよく合う。
2時間8分
★★★★(見逃せない)
☆8月27日から全国東宝系でロードショー
(日本経済新聞夕刊に2016年8月26日に掲載。許可のない転載は禁じます)