武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

ランニング 映画

走って、走って、「生」を発散~ドイツ映画『陽だまりハウスでマラソンを』

投稿日:

世はマラソンブーム。

 

それもシニアから始める人が増えています。

 

かく言うぼくもその1人です~(^_^)

 

マラソン完走後の充足感は言葉で言い尽くせません。

 

この映画の主人公の気持ちがよくわかりました~(^_-)-☆

 

☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆

©2013 Neue Schönhauser Filmproduktion, Universum Film, ARRI Film & TV

©2013 Neue Schönhauser Filmproduktion, Universum Film, ARRI Film & TV

 

超高齢化社会に突入した先進諸国では、ここ数年、お年寄りパワーを描いた映画がめっきり増えてきた。

 

このドイツ映画もそう。

 

古希(70歳)を優に超えた主人公のパウルがフルマラソンに出場するのだから、間違いなくドラマになる。

 

といっても、この人、普通の市民ランナーではない。

 

1956年のメルボルン五輪の金メダリストなのだ。

 

元ヒーローという経歴が物語に重しを与えていた。

 

今やしかし、人生の晩年を迎え、病身の愛妻と共に、老人ホームに入所。

 

©2013 Neue Schönhauser Filmproduktion, Universum Film, ARRI Film & TV

©2013 Neue Schönhauser Filmproduktion, Universum Film, ARRI Film & TV

 

そこで目にしたのは無気力な入所者と事なかれ主義のスタッフの姿だった。

 

これは違う。そう思ったパウルは、老人は与えられた環境の中で穏便に生きるべしという固定概念に反発する。

 

そして昔日の雄姿を思い浮かべ、ベルリン・マラソンの完走を目指す。

 

「走りたい」

 

この気概と行動力に心が揺さぶられる。

 

その年齢で42.195㌔は非常に厳しい。

 

自分の限界に挑戦する熱き生き様をキリアン・リートホーフ監督が寄り添うようにして見据えた。

 

パワフル爺さんに扮したドイツの喜劇俳優ディーター・ハラーフォルデンは撮影当時、78歳。

 

週に3回ジムに通い、毎日ランニングを続け、9㌔減量して役に臨んだ。

 

これが初マラソン。

 

大したものだ。

 

パウルが現役時代と同様、コーチ役の妻と二人三脚で練習に取り組むシーンがほほ笑ましい。

 

©2013 Neue Schönhauser Filmproduktion, Universum Film, ARRI Film & TV

©2013 Neue Schönhauser Filmproduktion, Universum Film, ARRI Film & TV

 

「生」を発散させ、周りの者を元気づけていく。

 

何と爽やか!

 

ハイライトはレースの場面。

 

実際に走ったのは一部かもしれないが、競技場でウェーブが起きたのは俳優の力走ぶりを観客が目にしたから。

 

現実と映画が合致した感動的な瞬間だった。

 

てっきり実話と思いきや、そうではなかった。

 

それほど本作にはリアル感が充満していた。

 

素人ランナーの端くれとして大いに刺激を受けた。

 

 

1時間45分

 

★★★★(見逃せない)

 

☆3月21日(土)  シネ・リーブル梅田、京都シネマ

 3月28日(土)  シネ・リーブル神戸

 

(日本経済新聞2015年3月20日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)

-ランニング, 映画

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

報道メディアの今を考えましょう~映画『i-新聞記者ドキュメント-』

報道メディアの今を考えましょう~映画『i-新聞記者ドキュメント-』

『i -新聞記者ドキュメント-』 東京新聞社会部、望月衣塑子記者の取材活動を「密着取材」したドキュメンタリー映画です。 知りたいことを追い求め、納得できるまで引き下がらない彼女の姿勢には敬意を表します …

ジャジャジャーン、今年の映画ベストテンの発表です~(^_-)-☆

ジャジャジャーン、今年の映画ベストテンの発表です~(^_-)-☆

2018年 映画ベストテン 【日本映画】 1 『孤狼の血』監督:白石和彌 役所広司、松坂桃李、真木よう子 2 『日日是好日』監督:大森立嗣 樹木希林、黒木華、多部未華子 3 『ごっこ』監督:熊澤尚人  …

わが子への母親の切なる想い~『あなたを抱きしめる日まで』

わが子への母親の切なる想い~『あなたを抱きしめる日まで』

©2014『あなたを抱きしめる日まで』製作委員会 この映画、ぐんぐん引き込ませるパワーがあります。   大好きな作品です~(^O^)/   ☆     ☆     ☆     ☆  …

21日、またまた『大阪「映画」事始め』の講演をします~(^_-)-☆

21日、またまた『大阪「映画」事始め』の講演をします~(^_-)-☆

今夕、ABCの情報番組『キャスト』で特集「神戸・京都・大阪の映画発祥地論争(?)」が放映されました。 海外からの映画導入に貢献した稲畑勝太郎さんと荒木和一さんの名前が出てこなかったのは残念ですが、短い …

情緒ある光景にうっとり~

情緒ある光景にうっとり~

久しぶりのブログです。   GW最終日のきょう、夕方、走りました。   まばゆい夕陽に誘われ、西に向かって。   ランニングも8日ぶりです。   気がつくと、尻 …

プロフィール

プロフィール
武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。関西大学非常勤講師。