愛の純粋さを高々と謳い上げた心温まるラブ・ストーリー。
不条理な社会的抑圧に断固、屈しないアフリカ系アメリカ人(黒人)のカップルと家族に寄り添いたくなる、そんな愛おしい映画だった。
監督は、孤独な青年の生き様を綴った『ムーンライト』で一昨年のアカデミー賞作品賞などを受賞したバリー・ジェンキンス。
1970年代のニューヨーク・ハーレムの物語である。
19歳のティッシュ(キキ・レイン)と22歳のファニー(ステファン・ジェームス)は幼なじみで、恋人でありながら親友のような間柄。
互いに信頼し合い、強い絆で結ばれている。
愛を育む2人を捉えた映像はことの外、甘美。
往年のヒット曲『やさしく歌って』など柔らかく繊細なサウンドに包まれ、カメラが浮遊するように自在に動く。
長回しも効果的だった。
幸せの絶頂にある彼らに想定外の出来事が起きる。
全く身に覚えのないレイプの罪でファニーが逮捕、監禁されたのだ。
まだまだ黒人差別の激しい時代、いかに無実を証明できるのか。
ここで浮上するのがティッシュの家族。
とりわけ母親シャロン(レジーナ・キング)の奮闘ぶりが際立つ。
愛娘のために単身、被害者女性と対峙する行動力には驚かされる。
彼らを取り巻く状況は厳しい。
当然、怒りと抵抗が芽生える。
ロマンチックな希望に満たされた世界とは対極的。
それでも先鋭的に斬り込まないのが監督の信条なのだろう。
「ビール・ストリートとは、ニューオリンズにある通りで、全ての黒人のレガシー(遺産)だ」
原作者ジェームズ・ボールドウィンの冒頭の言葉が本作に通底している。
しかしそれ以上に、人種や民族を超えた普遍的な物語に仕上がっている。
そこを高く評価したい。
1時間59分
★★★★(見逃せない)
☆2月22日(金)より、全国ロードショー!
関西では、大阪ステーションシティシネマ/TOHOシネマズなんば/TOHOシネマズ二条/MOVIX京都/シネ・リーブル神戸/TOHOシネマズ西宮OS
(日本経済新聞夕刊に2019年2月22日に掲載。許可のない転載は禁じます)