リメーク映画はよほど斬新でなければ成功しない。
4度目となる本作は、初主演の歌手レディー・ガガのボーカルを前面に打ち出した。
演技派俳優ブラッドリー・クーパーも主役を兼ねて初監督にチャレンジ。
初モノ尽くしが功を奏した。
人気歌手ジャクソン(クーパー)が場末のバーに立ち寄り、シャンソンの「ラ・ヴィ・アン・ローズ(バラ色の人生)」を歌うアリー(ガガ)の美声に魅せられる。
掴みとして申し分ない。
この男から誘われ、ステージで共演した彼女は歌手になる夢を実現できると感じ、ウエートレスを辞める。
同時に2人の間に恋情が芽生え、結ばれる。
非常に分かりやすい展開だ。
アリーが彼を有名人ではなく、人間として惹かれるところがミソ。
感性と相性が見事にマッチし、信頼を寄せ合っていく過程がほほ笑ましい。
その後は過去の「スタア(スター)誕生」と同様、妻が人気者になるにつれ、夫が堕ちていく。
温度差の大きさが嫉妬心と葛藤を増幅させる。
本音のぶつかり合いが映画の核心部分だ。
男が酒とドラッグに走るのは定石で、ここでも深みにはまり込んでいく。
それをアリーが仕事と両立させ、いかに歯止めをかけようとするか。
涙ぐましい奮闘が見せ場になっている。
自ら新曲を書き下ろしたガガの歌唱力が際立つ。
圧巻だ!!
ヒロインの生き方が、クラブのダンサーから今日の地位を築いた歌姫の足跡と重なって見える。
コンサートの場面では、全て舞台上の演者視線で撮影されており、内面描写に迫るためにクローズアップを多用。
ガガに負けじと歌声を披露したクーパーの演出が存外にこだわっていた。
全編、レディー・ガガの映画と言ってもいいかもしれない。
演技に対する熱量が半端ではなかった。
夫婦愛をドラマチックに描いた濃厚な音楽映画だった。
2時間16分
★★★★
☆12月21日(金) 大阪ステーションシティシネマほか全国公開
(日本経済新聞夕刊に2018年12月14日に掲載。許可のない転載は禁じます)