第2次大戦末期、民間人を含む20万人余りが命を落とした沖縄戦の秘話を追ったドキュメンタリー映画。
スパイを養成した特務機関、陸軍中野学校出身のエリート青年将校との深い関わりをあぶり出す。
〈沖縄〉の過去と現在を見据える三上智恵監督と大矢英代監督の共同作品。
徹底した現場主義と証言集めを貫く本作には熱きジャーナリスト魂が迸っている。
米軍上陸後、本島南部での激戦を題材にした映画はこれまで多く作られた。
しかし日本軍の降伏(1945年6月23日)以降、北部で展開されたゲリラ戦はあまり知られていない。
そこに焦点を当てた。
いきなり驚愕の事実が浮き彫りにされる。
10代半ばの少年兵からなる「護郷隊」の存在だ。
隊員は米軍施設への夜襲や爆破を繰り返し、時にはわざと米兵に捕まり、収容所内で破壊工作を行っていた。
彼らはゲリラ戦や諜報活動に特化した子供たち。
世界各地の内戦でクローズアップされる少年兵が沖縄戦でも暗躍していたとは……。
何ともやるせない。
しかも末路は悲劇そのもの。
本来は非戦闘員なのに、お国のために闘わされ、生き残ってもPTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しみ続けた。
地域の有力者や学校の教諭も動員され、「国士隊」が結成された。
住民同士を監視、密告させる秘密組織である。
さらにマラリヤ蔓延地への島民の強制移住、スパイ・リストに基づく住民虐殺……。
次々と惨劇が突きつけられる。
これらを画策したのが中野学校の卒業生42人。
生存者を探し、インタビューを通じて、「深い闇」を解き明かそうとする。
自衛隊が旧日本軍の体質を引き継いでいる点にも言及し、今の問題として沖縄秘密戦を捉えた。
戦後73年。
考えさせられる濃密な映画だった。
1時間54分。
★★★★(見逃せない)
☆4日から大阪・第七藝術劇場、京都シネマ、順次元町映画館 にて公開。
(日本経済新聞夕刊に2018年8月3日に掲載。許可のない転載は禁じます)
戦後における先の大戦に対する考え方が「ドイツ」と「日本」では正反対のようですね。
島川さん、コメントありがとうございます。
ドイツでは今なおナチスの大罪と戦争を風化させないようにしています。このドキュメンタリー映画は日本におけるその動きだと思っています。