Category Archive: 映画

1月 12

素人ヨットマンの奇抜な行動~英国映画『喜望峰の風に乗せて』

英国を代表する名優コリン・ファースが孤高のヨットマンに扮する海洋ドラマ。

てっきり男のロマンをテーマにした冒険映画と思いきや、全く想定外の展開。

実話と知って驚いた。

(C)STUDIOCANAL S.A.S 2017

1968年、英国で単独無寄港世界一周ヨットレースが開催され、脱サラの起業家ドナルド(ファース)が参加した。

独自開発の船舶用測定器が売れず、金銭的に困窮する中、賞金目当てで出場を決意したのだ。

(C)STUDIOCANAL S.A.S 2017

素人ヨットマンとあって、マスメディアに注目され、時の人になっていく。

さらに資産家からの投資話が絡み、どんどん大騒ぎに。

(C)STUDIOCANAL S.A.S 2017

その翻弄される様が何とも滑稽である。

ドナルドは3人の幼い子を持つ父親。

(C)STUDIOCANAL S.A.S 2017

レース出場に反対する愛妻クレア(レイチェル・ワイズ)との微妙な心模様が浮き彫りにされるにつれ、家族の物語であることに気づかされる。

(C)STUDIOCANAL S.A.S 2017

(C)STUDIOCANAL S.A.S 2017

ヒーローになって妻子を喜ばせ、国民の期待に応えたい。

失敗続きの男が今こそ再生できると思い、自分で設計したヨットで出航する姿には共感できる。

(C)STUDIOCANAL S.A.S 2017

海上に出てからは一人劇。

トラブル続出で孤軍奮闘の主人公と熱狂の本国との対比、彼の武勇伝を書く新聞記者(デヴィッド・シューリス)との通信のやり取り……。

(C)STUDIOCANAL S.A.S 2017

メリハリをつけ、飽きさせなかった。

やがてドナルドはとんでもない行動に出て、映画の様相が激変する。

ジェームズ・マーシュ監督は苦悶する彼に肉迫するも、この重要なシークエンスの描き方がやや単調で弱かった。

ファースの演技は申し分ない。

チャレンジ精神、見栄、弱音、偽善性、家族愛……。

すべての面において完璧に演じ切った。

孤愁が似合う男の日焼けした顔が絵になっていた。

(C)STUDIOCANAL S.A.S 2017

一介の庶民が大舞台に立たった時の身の振り方。

そこに人間の本性が垣間見られる。

その意味で濃厚なヒューマン・ドラマだった。

1時間41分

★★★(見応えあり)

☆大阪ステーションシティシネマ、京都・TOHOシネマズ二条、シネ・リーブル神戸ほかで公開中

(日本経済新聞夕刊に2019年1月11日に掲載。許可のない転載は禁じます)

12月 23

講演会『映画のはじまり、みな大阪』のお知らせです~(^_-)-☆

『映画のはじまり、みな大阪』

こんな演題で来年2月9日(土)午後2時~、大阪市立中央図書館で講演します。

映画上映、興行、活動弁士、大スター、映画本……。

みな大阪が発祥地で、大阪人が絡んでいます。

そんな大阪と映画との深~い関わりをたっぷりお話しします。

先着順。

何と無料ですよ~!!

ご興味があれば、お気軽にどうぞ~(^_-)-☆

12月 22

ホロコーストを生き延びたユダヤ人老人の故郷へのロードムービー『家(うち)へ帰ろう』(今日から公開)

けさ、ABC朝日放送テレビの朝のワイド番組『おはよう朝日 土曜日です』にゲスト出演してきました。

お正月のおススメ映画の解説。

5本取り上げましたが、最後に熱っぽく語った映画が本作でした。

     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆

ナチス・ドイツによるホロコースト(大量虐殺)が絡む映画では異色作に属する。

自らのアイデンティティーを確認するため、郷里への一人旅を敢行する老人の物語。

人との触れ合いがことさら胸に響く。

Ⓒ2016 HERNÁNDEZ y FERNÁNDEZ Producciones cinematograficas S.L., TORNASOL FILMS, S.A RESCATE PRODUCCIONES A.I.E., ZAMPA AUDIOVISUAL, S.L., HADDOCK FILMS, PATAGONIK FILM GROUP S.A.

監督はユダヤ系アルゼンチン人のパブロ・ソラルス。

祖父の前では、「ポーランド」の言葉を発するのがタブーだったという記憶を基に脚本を執筆した。

ブエノスアイレスで仕立屋を営む88歳のアブラハムが老人施設に入る前夜、自宅を抜け出し、単身、飛行機でスペインへ飛ぶ。

手には自ら仕立てた背広。

彼はポーランドの地方都市で生まれ育った。

第2次大戦中、ユダヤ人ゆえ強制収容所に移送されたが、辛くも逃げ延びていた。

その時に傷つけられた右脚を今なお引きずって歩く。

郷里へは二度と戻らないと決めていたのに、使命感に突き動かされ、故国に向かう。

70年間、音信不通の親友との再会を願って……。

Ⓒ2016 HERNÁNDEZ y FERNÁNDEZ Producciones cinematograficas S.L., TORNASOL FILMS, S.A RESCATE PRODUCCIONES A.I.E., ZAMPA AUDIOVISUAL, S.L., HADDOCK FILMS, PATAGONIK FILM GROUP S.A.

そこに背広の重要性が秘められており、物語がにわかに深化していく。

マドリッドから鉄道を利用するも、忌み嫌うドイツの経由を断固、拒む。

このように意地っ張りで気難しく、それでいてどこか憎めない老人をアルゼンチンの名優ミゲル・アンヘル・ソラが見事に演じ切った。

見ていてハラハラさせるこの爺さんに女性たちが力を添える。

ホテルの女主人、ドイツの女性文化人類学者、看護師……。

Ⓒ2016 HERNÁNDEZ y FERNÁNDEZ Producciones cinematograficas S.L., TORNASOL FILMS, S.A RESCATE PRODUCCIONES A.I.E., ZAMPA AUDIOVISUAL, S.L., HADDOCK FILMS, PATAGONIK FILM GROUP S.A.

彼女たちとの関わりが実に温かく、しなやかに描かれていた。

疎遠な末娘と会う脇筋が光っていた。

彼女の腕には収容所番号の入れ墨。

父親の苦しみを受け継ぐ証しである。

これぞ細部にこだわった演出であろう。

Ⓒ2016 HERNÁNDEZ y FERNÁNDEZ Producciones cinematograficas S.L., TORNASOL FILMS, S.A RESCATE PRODUCCIONES A.I.E., ZAMPA AUDIOVISUAL, S.L., HADDOCK FILMS, PATAGONIK FILM GROUP S.A.

「友情」と「約束」。

2つのキーワードがラストで前面に迫ってくる心に染み入るロードムービーだった。

1時間33分  

★★★★(見逃せない)

☆12月22日(土)~シネ・リーブル梅田、 京都シネマ、 シネ・リーブル神戸にて公開

(日本経済新聞夕刊に2018年12月21日に掲載。許可のない転載は禁じます)

12月 20

22日(土)、ABCテレビ朝のワイド番組『おはよう朝日です』に出演します~(^_-)-☆

ちょっとお知らせです。

22日(土)、朝日放送(ABC)テレビ朝のワイド番組『おはよう朝日です』に出演することになりました~😁

オススメのお正月映画の紹介です。

映画評論家ではないし、他に映画を語れる人がぎょうさんいてはるのに、何でぼくなん?

よぉ喋るし、面白いからでしょうか。

ハハハ、寄席芸人ですがな(笑)

出演時間は午前6時58分から15分間だけです。

喋り足らんやろな~😅

それに、低血圧で朝は苦手。

というか、起きれるのかが最大の心配事です。

12月 15

レディー・ガガが弾けた!!~音楽映画『アリー/ スター誕生』(21日から公開)

リメーク映画はよほど斬新でなければ成功しない。

4度目となる本作は、初主演の歌手レディー・ガガのボーカルを前面に打ち出した。

演技派俳優ブラッドリー・クーパーも主役を兼ねて初監督にチャレンジ。

初モノ尽くしが功を奏した。

(C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

人気歌手ジャクソン(クーパー)が場末のバーに立ち寄り、シャンソンの「ラ・ヴィ・アン・ローズ(バラ色の人生)」を歌うアリー(ガガ)の美声に魅せられる。

掴みとして申し分ない。

この男から誘われ、ステージで共演した彼女は歌手になる夢を実現できると感じ、ウエートレスを辞める。

同時に2人の間に恋情が芽生え、結ばれる。

(C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

非常に分かりやすい展開だ。

アリーが彼を有名人ではなく、人間として惹かれるところがミソ。

感性と相性が見事にマッチし、信頼を寄せ合っていく過程がほほ笑ましい。

その後は過去の「スタア(スター)誕生」と同様、妻が人気者になるにつれ、夫が堕ちていく。

温度差の大きさが嫉妬心と葛藤を増幅させる。

本音のぶつかり合いが映画の核心部分だ。

男が酒とドラッグに走るのは定石で、ここでも深みにはまり込んでいく。

それをアリーが仕事と両立させ、いかに歯止めをかけようとするか。

涙ぐましい奮闘が見せ場になっている。

(C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

自ら新曲を書き下ろしたガガの歌唱力が際立つ。

圧巻だ!!

ヒロインの生き方が、クラブのダンサーから今日の地位を築いた歌姫の足跡と重なって見える。

コンサートの場面では、全て舞台上の演者視線で撮影されており、内面描写に迫るためにクローズアップを多用。

ガガに負けじと歌声を披露したクーパーの演出が存外にこだわっていた。

全編、レディー・ガガの映画と言ってもいいかもしれない。

演技に対する熱量が半端ではなかった。

夫婦愛をドラマチックに描いた濃厚な音楽映画だった。

2時間16分

★★★★

☆12月21日(金) 大阪ステーションシティシネマほか全国公開

(日本経済新聞夕刊に2018年12月14日に掲載。許可のない転載は禁じます)

12月 11

最恐のエンターテインメント~『来る』(公開中)

映画ファンのための感動サイト「シネルフレ」で『武部好伸のシネマエッセイ』というコーナーを持たせてもらっています。

12月分は現在、公開中の日本映画『来る』です。

夜半、ウイスキーをちびちびやりながら、「遊び心」をめいっぱ盛り込んで書かせてもらいました。

以下に全文を掲載します。

~シュール、シュールで人の素顔を暴いてしまう「あれ」~

正直、怖い映画、ホラー系の映画は苦手です。『リング』(1998年)のテレビから出現する貞子。これは強烈でした。今でも長い黒髪と貞子という名がぼくの弱点になっています。とりわけ目に見えない得体の知れないものに襲われると、もうあきまへん。学生時代、『エクソシスト』(1973年)を観て以来、電車に乗ると、乗客の首が360度回るという恐怖心を植え付けられました。スティーヴン・キング原作の『シャイニング』(1980年)では双子の女の子に対してトラウマが……。

本作の「あれ」も正体を現しません。なんとも難儀な映画なので、試写をパスしようと思ったのですが、この原稿を書くために勇気百番、スクリーンと向き合いました。ところが、あら不思議、最後まで目を瞑らずに観ることができたのです。なぜかと言うと、あまりにもシュールな世界だったからです。怖さを通りすぎていましたわ。

会社員の田原秀樹(妻夫木聡)と香奈(黒木華)が結婚し、女の子の知紗が生まれてから、自宅マンションの部屋が荒らされたり、会社の同僚が原因不明の病で死んだりと次々に摩訶不思議なことが起こり始めます。「あれ」が来るのです。あくまでも、「あれ」です。「それ」にすると、『IT/イット』(2017年)になってしまいますがな。まぎらわしい。

前段として、秀樹が幼いとき、森の中で行方不明になった女児から「怖い誘惑」を受けるという伏線があります。悪いことをしたり、ウソをついたりしたら、さらっていく「ぼぎわん」というお化けの存在。「あれ」はそうなのでしょうか? 現在と過去が交錯し、あのときの女の子がなにか絡んでいるのではないかと思わせるところがホラーっぽいですね。

この秀樹、実に調子のええ男です。子育て日記というブログを立ち上げ、模範的な「イクメンパパ」ぶりをアピールするのですが、内実はすべて妻まかせ。外面がいいというか、目立ちたがり屋というか、とにかく自己中。やっかいですよ、こんな男。こういうタイプの人物を演じさせたら、妻夫木君の右に出る者はいないですね。軽妙さが抜群です。

この辺りでぼくの頭の中に疑問符が浮かんできました。主演の岡田准一がいっこうに登場しないからです。まさかこのままずるずるいくのではと危惧していたら、ようやく姿を見せてくれました! それもなにやら胡散臭い野村和浩というオカルトライターの役で。こんなややこしい岡田君、見たことありまへんわ。しかも真田広之の若いころとそっくり。こう思った時点で、すでに怖さとは無縁状態になってきつつありました。

その野村を紹介したのが、秀樹の高校時代の友人で民俗学者の津田大吾(青木宗高)。関西訛りで話す、これまたややこしい感じの男です。岡田君も、青木君も、黒木さんもみな大阪出身。それを活かし、彼ら3人が大阪弁で喋ったらオモロイと思ったのはぼくだけでしょうか。そんなことしたら、ホラーからコメディー路線に変わってしまいそうですね。中島哲也監督はさすがそこまでイチビリませんでした(*イチビルは「ふざける」「おちょける」という意味の大阪弁)。

野村の彼女っぽい比嘉真琴(小松菜奈)はキャバ嬢をしている霊媒師。彼女は秀樹の家族を襲う「あれ」を退治しに行くのですが、残念ながら、霊力が弱い。そのうち日本最強の霊媒師といわれる姉の琴子(松たか子)が現れ、いよいよ「あれ」と一騎打ち。この琴子、「リング」の貞子によく似た黒髪で、最もぼくの苦手とするタイプです。しかも色白でか細い声。こんな女性ににらまれたら、金縛りに遭いますわ。

物語は想定外の方向へと展開していきます。気が付くと、秀樹から野村に主役が変わっていました。やっぱり岡田君が主演で間違いなかったです。「あれ」のパワーが増大し、何人かが惨たらしく命を落とします(誰とは言いません!)。ここで、「なんで警察が出てけえへねん。捜査本部を置かなあかんやろ」と憤っても意味がありません。とにもかくにもシュールな話なのですから、現実から目を背けることが肝要です。

クライマックスがすごかった。神道の神主、密教の僧、修験道の山伏、沖縄の祝女(のろ)、韓国の巫(かんなぎ)といったシャーマニズム的な要素の強いキャラクターが一堂に会します。ここまで出すのなら、『エクソシスト』で実績のあるキリスト教(カトリック)の悪魔払いも呼んできたらええのにと思ったりします。いや、いっそのこと、ヒンドゥー教、イスラム教、クイーンのフレディー・マーキュリーが信仰していたゾロアスター教(拝火教)など世界のあらゆる宗教の聖職者が一丸となって、「あれ」と対峙してほしかった。賑やかしになってええ塩梅やと思うのですが、こういう発想、不謹慎ですかね……。

「あれ」は何だったのかを考える前に、主要な登場人物はみな、表と裏の顔を見せてくれました。秀樹はその最たるもので、良妻賢母である妻の香奈は毒婦的な面を覗かせ、クールに振る舞う野村はおぞましい過去を引きずっており、飄々とした津田も実はスケベ男であり、ケバケバしい真琴は母性愛豊かな女性といった具合にまったく異なるキャラを潜ませていました。

こう見ると、「あれ」は心の闇を顕在化させた妖怪のようなものであり、同時に人の素顔を暴くもののようにも思えます。あと3回ほど観たら、「あれ」の実像がわかってくるかもしれません。多分、観ないでしょうけど。というわけで、娯楽映画としてはよくできていましたし、冒頭から最後まで飽きさせなかった中島監督の演出力は高く評価したいです。ただ、1つやっかいなことがあります。緑の幼虫を見ると、ギャーッと叫んでしまいそうな気がしてならないのです。

12月 09

韓国の骨太な社会派ドキュメンタリー映画『共犯者たち』&『スパイネーション 自白』

こんな骨太なジャーナリストがお隣の韓国にいるとは知らなかった。

政権批判の報道をしたことで不当解雇された公営放送局MBCのプロデューサー、チェ・スンホさんが独立メディア「ニュース打破」を立ち上げ、政権に寄り添って〈広報機関〉と化した放送局に容赦なくメスを入れていきます。

この人がメガホンを取り、その様子をあますことなく伝える社会派ドキュメンタリー映画『共犯者たち』が大阪・十三の第七藝術劇場で公開中です。

脱北者を「北朝鮮のスパイ」として拘束するおぞましい現実にチェ・スンホさんが迫る『スパイネーション 自白』も上映されています。

『華氏119』のマイケル・ムーアも真っ青になるほどの不屈の精神で、アポなし突撃取材を敢行し、政権のメディア介入や言論弾圧の実態を暴いていく過程が何ともスリリング。

この人、1年前にMBCに復職し、何と社長に選任されました!!

『タクシー運転手 約束は海を越えて』や『1987、ある闘いの真実』などジャーナリズムの本質を突く映画を連発している韓国ですが、日本ではこの手の映画が皆目作られませんね。

マスコミ関係者、メディア研究者、社会派映画に関心のある人は必見ですよ。

12月 03

ジャジャジャーン、今年の映画ベストテンの発表です~(^_-)-☆

2018年 映画ベストテン

【日本映画】

1 『孤狼の血』監督:白石和彌 役所広司、松坂桃李、真木よう子

2 『日日是好日』監督:大森立嗣 樹木希林、黒木華、多部未華子

3 『ごっこ』監督:熊澤尚人 千原ジュニア、平尾菜々花、優香

4 『菊とギロチン』監督:瀬々敬久 木竜麻生、東出昌大、韓英恵

5 『オー・ルー・シー』監督:平栁敦子 寺島しのぶ、南果歩、ジョシュ・ハートネット

6 『ハードコア』監督:山下敦弘 山田孝之、佐藤健、荒川良々

7 『飢えたライオン』監督:緒方貴臣 松林うらら、水石飛夢、筒井真理子

8 『沖縄スパイ戦史』監督:三上智恵、大矢英代 *ドキュメンタリー

9 『斬、』監督:塚本晋也 池松壮亮、蒼井優、塚本晋也

10 『教誨師』監督:佐向大 大杉連、烏丸せつこ、玉置玲央

【外国映画】

1 『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』〈米〉監督:スティーヴン・スピルヴァーグ
       メリル・ストリープ、トム・ハンクス、サラ・ポールソン

2 『スリー・ビルボード』〈米〉監督:マーティン・マクドナー
       フランシス・マクドーマンド、ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェル

3 『フロリダ・プロジェクト』〈米〉監督:ショーン・ベイカー
       ブルックリン・キンドリー、プリンス、ブリア・ビネイト、ウィレム・デフォー

4 『判決 ふたつの希望』〈レバノン・仏)監督:ジアド・ドゥエイリ
       アデル・カラム、カメル・エル・バジャ

5 『デトロイト』〈米〉監督:キャスリン・ビグロー 
       ジョン・ボイエガ、ウィル・ポールター、アルジー・スミス

6 『ボヘミアン・ラプソディ』〈米〉監督:ブライアン・シンガー
       ラミ・マレック、ルーシー・ボイントン、グウィリム・リー

7 『シェイプ・オブ・ウォーター』〈米〉監督:ギレルモ・デル・トロ
      サリー・ホーキンス、マイケル・シャノン、リチャード・ジェンキンス

8 『女は二度決断する』〈独〉監督:ファティ・アキン
       ダイアン・クルーガー、デニス・テシット、ヨハネス・クリシュ

9 『タクシー運転手 約束の海を越えて』〈韓国〉監督:チャン・フン
       ソン・ガンホ、トーマス・クレッチマン、ユ・ヘンジ

10 『希望のかなた』〈フィンランド〉監督:アキ・カウリスマキ
       シェルワン・ハジ、サカリ・クオスマネン、イルッカ・コイブラ

12月 01

寄り添って生きる「父と娘」、掘り出し物の大阪映画~『ごっこ』

『永い言い訳』や『万引き家族』など疑似家族を描いた映画には社会の闇にメスを入れた作品が多い。

本作はその最たるもの。

不安定な日常を生き抜く「父娘」の儚げな姿に胸が衝かれる。

大阪を舞台にした濃密な2人劇。

、(C)小路啓之/集英社 (C)2017 楽映舎/タイムズ イン/WAJA

原作は46歳で早世した大阪出身の漫画家、小路啓之の同名作品。

それを熊澤尚人監督が心理描写にこだわり、丁寧に映画化した。

家に閉じこもる40歳目前の無職の男、城宮(千原ジュニア)が全身、傷だらけの5歳の娘(平尾菜々花)を救出したことが事の発端。

2人は「パパやん」、「ヨヨ子」と呼び合い、一緒に暮らし始める。

、(C)小路啓之/集英社 (C)2017 楽映舎/タイムズ イン/WAJA

世間的には誘拐犯と被害者の関係になる。

彼らはしかし、心の拠り所として、唯一無二の存在として父親と娘を演じ、やがて素で触れ合うようになる。

実の親から虐待を受けていたであろうヨヨ子は過去を一切語らず、謎めいている。

そんな娘に人とのコミュニケーションが苦手な中年男がぎこちなく父性愛を注ぎ込む。

その健気さが何とも痛々しい。

、(C)小路啓之/集英社 (C)2017 楽映舎/タイムズ イン/WAJA

城宮の父親が残した帽子店での清貧な暮らしぶりは社会から孤立する弱者の象徴である。

そこに育児放棄、年金不正受給、引きこもり、いじめ、虐待などの社会問題を絡め、現実の厳しさを突きつける。

、(C)小路啓之/集英社 (C)2017 楽映舎/タイムズ イン/WAJA

うら寂れた商店街の佇まいが作風にぴったり合っていた。

残念なのは撮影が大阪ではなく、全て関東圏で行われていたこと。

空気感が違う。

ぜひとも「現場」で撮ってほしかった。

2人の生活がいつどんな形で終焉を迎えるのか。

常にそのことを意識させられる。

ヨヨ子の全貌が明るみに出る意外な結末にほのかな希望が見え、安堵した。

鬼気迫る演技を披露した千原と子役ながら堂々たる存在感を示した平尾。

、(C)小路啓之/集英社 (C)2017 楽映舎/タイムズ イン/WAJA

息の合ったコンビが稀有な家族ドラマを生み出した。

1時間54分 

★★★★(見逃せない)

☆12日1日からシネ・リーブル梅田、京都・出町座で、15日からシネ・リーブル神戸で公開。

(日本経済新聞夕刊に2018年11月30日に掲載。許可のない転載は禁じます)

11月 29

映画カルチャーの打ち上げでした~(^_-)-☆

今宵は、天六(天神橋筋六丁目)のブックカフェ「ワイルドバンチ」で、淑女の皆さまと打ち上げでした~🍷🍻

春から夏にかけて、関西大学梅田キャンパスで開かれた映画講座「シネマ・パラダイス」(大阪よみうり文化センター)の受講生の方々。

講座の最終日、昼間に打ち上げをしたんですが、やっぱり物足りなくて(笑)、「夜の部」の開催と相成った次第です。

今年の映画ベスト作品を発表したり、映画談義その他の話題に花を咲かせたりとえらい盛り上がりました~⤴⤴

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