Category Archive: 映画

4月 12

中島貞夫監督、渾身の本格時代劇~『多十郎殉愛記』(12日から公開)

「伊藤大輔監督の霊に捧ぐ」――。

『多十郎殉愛記』の冒頭に出てくる中島貞夫監督の言葉から、本格時代劇を撮るんだという本気度が伝わってきました。

しかも監督が20年ぶりにメガホンを取った新作とあって、否が応でも期待度が高まります。

幕末の京都、親の借金から逃れるために長州藩を脱藩し、貧乏長屋で暮らす若き浪人、清川多十郎。

高良健吾の何とも精悍な面構えに気圧されました。

凄腕の剣士なのに、今や討幕の想いも失せ、酒に溺れる怠惰な日々が続く……。

それでも眼光鋭く、思わずゾクッとさせられる不気味さを全身からかもし出していました。

そんな多十郎に小料理店の女将おとよが何かと世話を焼くも、すげない素振りをされ、胸を痛めます。

時代劇ではあまり見たことのない前髪がじつにチャーミング。

彼女に扮した多部未華子の愛くるしさに惹きつけられました。

ダメ男に惚れるというどうしようもない〈性〉をそこはかとなく演じ切っていました。

高良とのカップリングは申し分ありません。

ちょっと脱線しますが……。

その小料理店に飾ってあったお多福人形。

2013年に放映された森山未來と尾野真千子共演のNHKドラマ『夫婦善哉』で大阪・ミナミの法善寺横丁のぜんざい屋に鎮座していたものだと看破しました(笑)。

そのドラマは東映京都撮影所で撮影されたので、その後も撮影所に保管されていて、再利用したのでしょう。

こんな発見をするのが結構、楽しい~(^_-)-☆

閑話休題――。

そのうち、ひょんなことから多十郎は、新選組とライバル関係にある佐幕派の見回り組から目をつけられます。

そこへ故郷から勤王の志士になるべく腹違いの弟、数馬がやってくる……。

不穏な空気感をはらませながら、多十郎、おとよ、数馬の三人を絡ませ、一気にクライマックスの大立ち回りへと引き込んでいきます。

それも30分間、延々とチャンバラが続くのです。

気合の入った高良の殺陣。

よほど特訓を積んだに違いありません。

CGはいっさいなし。

すべて肉体で表現していました。

そこに中島監督の美意識を強く感じられます。

何本もの縄で捉えられるシーンは、まさに伊藤大輔監督の代表作『忠治旅日記』(1927年)の有名な場面とそっくり。

一瞬、高良健吾が大河内伝次郎になり代わった、そんな印象を受けました。

冒頭の言葉をきちんと具現化させており、それは伊藤監督への揺るぎないオマージュであるのです。

強いて言えば、殺陣が流麗すぎて、人を殺すことの凄さがあまり伝わってきませんでした。

血と刺殺音を強調させる実録時代劇とは一線を画し、それでいて壮絶なチャンバラを見せたかったのでしょう。

それが中島監督の理想とする時代劇なのかもしれませんね。

題名のごとく、多十郎とおとよの殉愛が哀しくもあり、また美しい。

てっきり原作があるものと思いきや、オリジナル脚本でした。

よけいな情報をそぎ落としており、非常にこなれたコンテンツだと思います。

どのワンシーンからも熱き映画愛がにじみ出ていた~!

久しぶりにホンモノの時代劇を目にし、充足感に浸れました。

どうか後進の映画人がその魂を引き継いでいってほしい。

84歳の中島監督、ほんまにお疲れさまでした。

HP:http://tajurou.official-movie.com/

3月 30

13年間続けてきた日経新聞の「シネマ万華鏡」……終焉と相成りました

昨日、アップした日経新聞の「シネマ万華鏡」の拙稿。

金曜日夕刊の文化面で月に2度、映画の原稿を寄稿していましたが、昨日をもって「上がり」となりました。

2006年からなので、13年間も続けてきたことになります。

トータルで305本の映画~!

毎回、エッセイ風に好き放題に書かせていただき、編集の方には感謝しています。

何よりも、ほとんど接点のなかった日経新聞とご縁を作ってくださった元デスクのCさんにはほんまにありがたく思うています。

ジャーナリズムの本質に迫った骨太な社会派映画『記者たち~衝撃と畏怖の真実』で締めくくれたのがほんまによかったです。

どうして「上がり」かと言うと、4月以降、東京の原稿を流用することになったからです。

以前から他の全国紙ではそうなっており、日経の大阪本社が最後の牙城でした。

時代の流れですね……。

よくぞここまで踏ん張ってきたものです。

すべて東京中心。

メディアの世界も東京一極集中の趨勢に逆らえなくなってきました。

海外ではちょっと考えられないことです。

先進諸国の中で一極集中を続けているのは日本だけ。

全くよろしくない事態だとぼくは受け止めています。

かつて全国紙の大阪本社はどこもこちらの書き手に原稿を依頼し、独自に映画のページを作っていたのですが……。

うだうだ言っても仕方がありません。

残念ですが、現実をきちんと受け止め、これからも映画を観続けていこうと思っています。

そして、大阪に踏み留まり、執筆テーマ(映画、ケルト文化、洋酒、大阪)をあれこれと表現・発信していくつもりです~(^_-)-☆

3月 29

日経新聞「映画万華鏡」の最後の原稿~『記者たち~ 衝撃と畏怖の真実』

大量破壊兵器の保有――。

2003年のイラク戦争開戦の真相を徹底的に追い求め、その事実がないことを報道し続けた記者たちの実像。

政府発表を鵜呑みにせず、権力の監視を貫いたジャーナリスト魂に胸が打たれる。

ⓒ 2017 SHOCK AND AWE PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

同時多発テロ以降、愛国心と報復心が高まるアメリカ。

大手メディアはこぞってブッシュ政権のイラク侵攻を後押ししていた。

そんな中、独自取材を始めたのが中堅新聞社ナイト・リッダーのワシントン支局。

支局長を含め4人の記者が中東の専門家や外交官らに裏取りを重ねるうち、政権の嘘がわかってくる。

ⓒ 2017 SHOCK AND AWE PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

真っ向からの政府批判の報道とあって、孤立無援となり、脅迫も受ける。

それでも、「我々はわが子を戦場に送る者たちの味方だ」という支局長の信念は揺るがない。

監督は『スタンド・バイ・ミー』や『恋人たちの予感』など軽妙な娯楽作で知られる名匠ロブ・ライナー。

この事実を知るや、使命感を持って映画化し、自ら支局長役にチャレンジした。

本気度が伝わってくる。

ⓒ 2017 SHOCK AND AWE PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

実録風で冒頭からグイグイ引き込まされる。

非常にシャープな演出だ。

ともすれば記者を美化しがちだが、どこまでも等身大の視点で見据えていた。

その記者に扮したウディ・ハレルソン、ジェームズ・マースデン、トミー・リー・ジョーンズは実際に取材に当たった記者からアドバイスを受け、演技に臨んだ。

ⓒ 2017 SHOCK AND AWE PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

情報入手の場面はリアル感満点だった。

戦場で負傷した若い兵士の悲痛な姿が並行して描かれ、ニュース映像も随所に挿入される。

これらがより現実味を高めていた。

この話は全く知らなかった。

元新聞記者の身としていたく感動を覚えた。

ジャーナリズムの本質に迫った『大統領の陰謀』、『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』と比肩できる一級の社会派映画である。

1時間31分  

★★★★★(今年有数の傑作)

☆3月29日(金)から全国公開
  関西では、大阪ステーションシティシネマ、布施ラインシネマ、シネ・リーブル神戸
  3月30日(土)から 京都シネマ

【配給】ツイン

(日本経済新聞夕刊に2019年3月29日に掲載。許可のない転載は禁じます)

3月 22

なんと黒人刑事がKKKに潜入捜査!~『ブラック・クランズマン』(22日~公開)

ブラック・ムービー(黒人映画)の旗手、スパイク・リー監督が渾身の力を込めて撮った犯罪サスペンス。

約半世紀前の物語とはいえ、人種や宗教で分断が進むアメリカの今を浮き彫りにしている。

この監督初のアカデミー受賞作(脚色賞)。

(C)2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.

不朽の名作『風と共に去りぬ』(1939年)のアトランタ陥落シーンが冒頭に映される。

南北戦争での南軍敗北による奴隷制崩壊の象徴的な場面。

その後もしかし、黒人差別が続くという意味深な序章である。

一転、1972年の田舎町に転換する。

過激なブラック・パワーが吹き荒れる中、青年ロンが唯一、黒人警察官として地元警察署に採用される。

署内でも差別が横行する歪な時代だった。

ロンに扮するジョン・デヴィッド・ワシントンは名優デンゼル・ワシントンの息子。

父親がリー監督の代表作『マルコムX』(92年)で主演していた。

まことに奇妙な縁……。

この主人公が白人至上主義の秘密結社KKK(クー・クラックス・クラン)への潜入捜査に着手する。

相棒の白人刑事フリップ(アダム・ドライバー)がユダヤ人というのがミソ。

(C)2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.

思いもよらぬ超変化球の作戦に度肝を抜かれるだろう。

非常にシリアスな内容で、いつ正体がバレるのかとハラハラさせられる。

なのに全編、ユーモアが散りばめられ、笑いを生む。

その〈ゆとり〉が本作の隠し味になっていた。

「アメリカ・ファースト」を連呼するKKKの最高幹部(トファー・グレイス)。

その姿がトランプ大統領を彷彿とさせ、かなり政治的な映画といえる。

聡明な黒人対愚かな白人。

一見、単純な構図だが、差別を許さない白人もきちんと描かれている。

(C)2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.

何よりもこのドラマが実話であることに驚かされる。

歯に衣着せぬ発言で知られるリー監督ならではの風刺の利いた一作だった。

2時間15分

★★★★(見逃せない)

☆3月22日(金)より、全国公開
TOHOシネマズ梅田/TOHOシネマズなんば/MOVIX京都/シネ・リーブル神戸……。

(日本経済新聞夕刊に2019年3月22日に掲載。許可のない転載は禁じます)

2月 26

オリジナル・カクテルの逸品「雪国」、その背景を探るドキュメンタリー映画『YUKIGUNI』

「雪国」――。

川端康成の小説を彷彿とさせるカクテルがあります。

Ⓒいでは堂

グラスのふちに白い砂糖をつけたスノースタイルと底に沈むグリーン・チェリーの美しさ。

この2つが絶妙なるアンサンブルを奏でてくれ、口にふくむと陶酔してしまいそうになる、そんなウォッカ・ベースのショート・カクテルです。

ちょうど60年前(昭和34年)、陸奥(みちのく)は山形県酒田市のバー「ケルン」の店主、井山計一さんが考案されました。

どのカクテルブックにも記載されているスタンダードの逸品。

Ⓒいでは堂

井山さんは御年、92歳(大正15年生まれ)で、いまなおカウンター内でシェーカーを振っておられます。

日本最高齢の現役バーテンダーです。

そんな井山さんの半生を綴ったドキュメンタリー映画『YUKIGUNI』(渡辺智史監督)が今年1月から東京を皮切りに全国各地で順次上映されており、3月以降、関西で相次いで公開されます。

今のところ、3月8日~=イオンシネマ和歌山、22日~=大阪・テアトル梅田、4月6日~=神戸・元町映画館、京都シネマ の予定です。

カクテルとバーにはドラマがあります。

そのことがご本人、ご家族、関係者の証言から浮き彫りにされています。

ぼくの洋酒+バーの盟友ともいえる大阪・北新地のBAR UKのオーナー・バーテンダー、荒川英二さんも出演しています。

この人はカクテル史に詳しく、稀代のカクテルの魅力を的確に解説されています。

Ⓒいでは堂

さらにバーをこよなく愛され、それを切り絵で表現した亡き成田一徹さんも……。

一瞬、目頭が熱くなりました。

Ⓒいでは堂

「日本一幸せなバーテンダーです」

こう語っていた井山さんの笑顔が忘れられません。

残念ながら、ぼくはまだお店にお伺いしたことがありません。

なんとしても井山さんが作られた「雪国」を一度、味わってみたいと思っています。

バー好き、カクテル好き、人が好きな方には必見の映画です。

映画のHP:http://yuki-guni.jp/

2月 23

今朝、ABCテレビ『おはよう朝日土曜日です』に出演しました~(^_-)-☆

今朝、ABCテレビ『おはよう朝日土曜日です』(おは土)で、アカデミー賞の諸々について喋ってきました~😁

コメンテーターの福本豊さんと握手したかったのですが、なにせ秒単位で動いており、ご挨拶すらできなかった。

残念~😭

でも、本番中、何度か目が合ってトキメキました(笑)

時間が短く、あっという間に終わりました。

何とかアカデミー賞のイロハについて解説したつもりでしたが、とても作品紹介までできず……。

そこで、25日(月)、アカデミー賞授賞式直前のABCラジオ『おはようパーソナリティー 道上洋三です』でしっかり解説してください~とラジオ出演の依頼がありました~❗

びっくりポン~👀‼

ありがたいことです。

何はともあれ、充実した早朝になりました~(^_-)-☆

2月 22

愛に包まれたアメリカ映画『ビール・ストリートの恋人たち』(本日公開)

愛の純粋さを高々と謳い上げた心温まるラブ・ストーリー。

不条理な社会的抑圧に断固、屈しないアフリカ系アメリカ人(黒人)のカップルと家族に寄り添いたくなる、そんな愛おしい映画だった。

(c)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.

監督は、孤独な青年の生き様を綴った『ムーンライト』で一昨年のアカデミー賞作品賞などを受賞したバリー・ジェンキンス。

1970年代のニューヨーク・ハーレムの物語である。

19歳のティッシュ(キキ・レイン)と22歳のファニー(ステファン・ジェームス)は幼なじみで、恋人でありながら親友のような間柄。

互いに信頼し合い、強い絆で結ばれている。

(c)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.

愛を育む2人を捉えた映像はことの外、甘美。

往年のヒット曲『やさしく歌って』など柔らかく繊細なサウンドに包まれ、カメラが浮遊するように自在に動く。

長回しも効果的だった。

(c)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.

幸せの絶頂にある彼らに想定外の出来事が起きる。

全く身に覚えのないレイプの罪でファニーが逮捕、監禁されたのだ。

まだまだ黒人差別の激しい時代、いかに無実を証明できるのか。

ここで浮上するのがティッシュの家族。

(c)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.

とりわけ母親シャロン(レジーナ・キング)の奮闘ぶりが際立つ。

(c)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.

愛娘のために単身、被害者女性と対峙する行動力には驚かされる。

(c)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.

彼らを取り巻く状況は厳しい。

当然、怒りと抵抗が芽生える。

ロマンチックな希望に満たされた世界とは対極的。

それでも先鋭的に斬り込まないのが監督の信条なのだろう。

(c)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.

「ビール・ストリートとは、ニューオリンズにある通りで、全ての黒人のレガシー(遺産)だ」

原作者ジェームズ・ボールドウィンの冒頭の言葉が本作に通底している。

(c)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.

しかしそれ以上に、人種や民族を超えた普遍的な物語に仕上がっている。

そこを高く評価したい。

1時間59分 

★★★★(見逃せない)

☆2月22日(金)より、全国ロードショー!
関西では、大阪ステーションシティシネマ/TOHOシネマズなんば/TOHOシネマズ二条/MOVIX京都/シネ・リーブル神戸/TOHOシネマズ西宮OS

(日本経済新聞夕刊に2019年2月22日に掲載。許可のない転載は禁じます)

2月 21

23日(土)の朝、ABCテレビ『おはよう朝日土曜日です』に出演します~(^_-)-☆

ちょっと告知です。

昨年暮れに続き、明後日の23日(土)、またまたABCテレビの情報ワイド番組『おはよう朝日土曜日です』(おは土)に出演することになりました。

来週月曜日(日本時間)に発表されるアカデミー賞に絡んでいろいろお話をするつもりです。

ノミネート作品の紹介というより、昨今の動向、政治発言、多様性など〈変化球〉で斬ろうと思うています。

出演時間は午前6時58分から~(^_-)-☆

朝が苦手なので、ほんま、大変ですわ(笑)

2月 17

日本最初のマラソンレースに迫った映画『サムライマラソン』(22日公開)

今日は京都マラソンですね。

ぼくは膝を傷めているので、レースとは無縁ですが……。

そもそも、日本初のマラソンは、いつどこで行われたのかご存知ですか?

何と幕末の安政2年(1855年)、今の群馬県にあった安中藩で催されていたんです。

それをモチーフにイギリス人監督が映画化した『サムライマラソン』が22日から全国で公開されます。

もちろんキャストは全員、日本人俳優です。

武士や領民が必死のパッチで山や谷を駆け巡る。

これは、なかなか楽しい映画でした。

映画ファンのための感動サイト「シネルフレ」の〈武部好伸のシネマエッセイ〉で面白おかしく書かせてもらっています。

2月 15

阪本順治監督、入魂の一作~『半世界』(15日から公開)

40歳にして迷わず。

「不惑」を目前にした3人の男がこれからどんな人生を折り返すのか。

幅広いテーマを題材にしてきた阪本順治監督の最新作は、地方の小さな町を舞台にした珠玉の人間ドラマである。

©2018「半世界」FILM PARTNERS

炭焼き職人の紘(稲垣吾郎)は父親から継がなくていいと言われ、その反発で仕事を続けている。

これと言って目的もなく、惰性で生きているのがわかる。

そんな彼の生活が、自衛隊員を辞め、突然、帰郷してきた瑛介(長谷川博己)の出現で変わる。

©2018「半世界」FILM PARTNERS

明朗だった男が今や神経質になり、刺々しい雰囲気を放っている。

一体、何があったのか。

そこに中古車販売業を営む三枚目的な光彦(渋川清彦)が絡む。

©2018「半世界」FILM PARTNERS

彼らは中学の同級生で、39歳の仲良しトリオ。

映画は、反抗期の息子(杉田雷麟)を抱え、家族を省みず、妻(池脇千鶴)から苦言を吐かれる紘を軸に展開する。

©2018「半世界」FILM PARTNERS

彼の無骨さが作風を決定づけていた。

稲垣の地に足の着いた演技が観させる。

こんな煙たいオヤジを演じられるとは驚きだ。

長谷川のストイックな役どころはやや過剰気味とはいえ、板に着いていた。

阪本監督のオリジナル脚本。

©2018「半世界」FILM PARTNERS

男の友情だけでなく、家族と夫婦の物語へと広げており、各人が背負う諸々の事を実に丁寧に紡ぎ出している。

市井の人を撮らせれば、本当に巧い。

この人の真骨頂である。

今の生き方でいいのか。

現実との葛藤に苦しむ中、3人3様、何かを感じ取っていく姿が、極めて日本的な風土を取り込んで浮き彫りにされる。

そこが見どころだ。

©2018「半世界」FILM PARTNERS

大事件も劇的な出会いもない。

人間同士の裸のぶつかり合いを通して、日常のひとコマが描かれているだけ。

それなのに円熟味のある作品に仕上がっている。

全てが納得できる。

本作は間違いなく阪本監督の代表作と言える。

素晴らしい日本映画と出会えた。

1時間59分   

★★★★★(今年有数の傑作)

☆2月15日(金)より、TOHOシネマズ梅田ほか、全国ロードショー

配給:キノフィルムズ

(日本経済新聞夕刊に2019年2月15日に掲載。許可のない転載は禁じます)

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