Category Archive: 映画

2月 15

阪本順治監督、入魂の一作~『半世界』(15日から公開)

40歳にして迷わず。

「不惑」を目前にした3人の男がこれからどんな人生を折り返すのか。

幅広いテーマを題材にしてきた阪本順治監督の最新作は、地方の小さな町を舞台にした珠玉の人間ドラマである。

©2018「半世界」FILM PARTNERS

炭焼き職人の紘(稲垣吾郎)は父親から継がなくていいと言われ、その反発で仕事を続けている。

これと言って目的もなく、惰性で生きているのがわかる。

そんな彼の生活が、自衛隊員を辞め、突然、帰郷してきた瑛介(長谷川博己)の出現で変わる。

©2018「半世界」FILM PARTNERS

明朗だった男が今や神経質になり、刺々しい雰囲気を放っている。

一体、何があったのか。

そこに中古車販売業を営む三枚目的な光彦(渋川清彦)が絡む。

©2018「半世界」FILM PARTNERS

彼らは中学の同級生で、39歳の仲良しトリオ。

映画は、反抗期の息子(杉田雷麟)を抱え、家族を省みず、妻(池脇千鶴)から苦言を吐かれる紘を軸に展開する。

©2018「半世界」FILM PARTNERS

彼の無骨さが作風を決定づけていた。

稲垣の地に足の着いた演技が観させる。

こんな煙たいオヤジを演じられるとは驚きだ。

長谷川のストイックな役どころはやや過剰気味とはいえ、板に着いていた。

阪本監督のオリジナル脚本。

©2018「半世界」FILM PARTNERS

男の友情だけでなく、家族と夫婦の物語へと広げており、各人が背負う諸々の事を実に丁寧に紡ぎ出している。

市井の人を撮らせれば、本当に巧い。

この人の真骨頂である。

今の生き方でいいのか。

現実との葛藤に苦しむ中、3人3様、何かを感じ取っていく姿が、極めて日本的な風土を取り込んで浮き彫りにされる。

そこが見どころだ。

©2018「半世界」FILM PARTNERS

大事件も劇的な出会いもない。

人間同士の裸のぶつかり合いを通して、日常のひとコマが描かれているだけ。

それなのに円熟味のある作品に仕上がっている。

全てが納得できる。

本作は間違いなく阪本監督の代表作と言える。

素晴らしい日本映画と出会えた。

1時間59分   

★★★★★(今年有数の傑作)

☆2月15日(金)より、TOHOシネマズ梅田ほか、全国ロードショー

配給:キノフィルムズ

(日本経済新聞夕刊に2019年2月15日に掲載。許可のない転載は禁じます)

2月 11

大阪自由大学で『大阪の映画文化史』をお話しします~(^_-)-☆

先日、大阪市立中央図書館で、『映画のはじまり、みな大阪』のテーマで講演したばかりですが、3月に一般社団法人(非営利型)大阪自由大学で『大阪の映画文化史』と題して3回にわたってお話しさせていただきます。

大阪自由大学は、地域・市民に開かれた学びの場です。

毎日新聞社の大先輩(池田知隆さん)が理事長を務めてはります。

映画黎明期、映画製作の撮影所、「大阪映画」の数々。

明治から大正、昭和を経て、平成にいたる大阪の映画文化史をわかりやすく解説するつもりです。

3回通しで聴講されると、大阪と映画の関わりの深さがわかっていただけると思っています。

ご興味のある方、お気軽に聴きに来てください~(^_-)-☆

2月 11

ドイツ映画『ちいさな独裁者』のトークイベント~(^_-)-☆

シネ・リーブル梅田で公開中の『ちいさな独裁者』のトークイベント。

昨日(10日)、午後2時からの回終了後、ほぼ満席の観客を前に、この映画について映画ライターの華崎さんと対談しました~🙆

写真は空席が目立っているように見えますが、背もたれが高いのです(笑)。

語りどころがいっぱいあり、簡潔に喋るのにひと苦労~😅

弱冠19歳の若造が空軍大尉の軍服をまとうや、年配の脱走兵を従え、暴君と化していく。

彼は私たちです。私たちは彼です。過去は現在です。

ロベルト・シュヴェンケ監督の言葉が胸に突き刺さります。

結局、「人は大きな嘘をつくほど、真面目な顔つきになる」という真理に落ち着きました~😜(笑)

2月 10

昨日の講演会『映画のはじまり、みな大阪』……、ちょっと愚痴を

昨日(9日)、大阪市立中央図書館(大阪市西区長堀)で、『映画のはじまり、みな大阪』と題して講演しました。

大阪市史編纂所セミナーです。

図書館5階にある300人収容の大会議室(ホールと言うたらあかんらしいです)がほぼ満席になるくらい大勢の方が来られ、実に気持ちよくお話しすることができました。

大阪は映画興行だけでなく、映画上映の発祥地でもあること、さらに活動弁士の第一号と日本初の大スターが大阪人といったように、映画黎明期に大阪の街と人が映画に大きく関わってきたことをわかりやすく解説させていただきました。

この話は、拙著『大阪「映画」事始め』(彩流社)を上梓した2016年10月以降、何度も公の場で喋ってきました。

そのつど、もっと行政や地域に関心を持ってもらいたいという願いがだんだん強まってきています。

映画興行発祥地のTOHOシネマズなんばの1階エレベーター乗り場の壁に、それを顕彰する碑文がはめ込まれています。

昭和28年、南街会館を建造したとき、時の東宝社長、小林一三さんが記したものです。

そのことを知っている人は、大阪人ですら少ない……。

哀しいです。残念です。

こんな貴重な文化遺産があるのに、もったいない!

だから、表の戎橋商店街に「ここが日本映画の発祥地」という立て札を設ければいいとぼくは声高に訴えているのですが、東宝、地元商店街、大阪市は全く動こうとしません。

何でなんですか!?

立て札を作るだけでいいのに……。

そんなに費用はかからないと思うのですが。

日本で最初に映画(荒木和一のヴァイタスコープ)が上映された「なんばパークス」角の難波中交差点についてもそうです。

その顕彰碑を建てればいいのに、土地所有者の南海電鉄は一時、関連イベントを催してくれましたが、それ以降は沈静化……。

何でなんですか!?

いっそのこと、ぼくが自腹を切って立て札、顕彰碑を作ろうかなとすら思っています。

こうしたこと1つ取ってみても、哀しいかな、大阪は文化度が低いと言わざるを得ません。

これ、よその街なら、「地元のPRになる」と喜んで動いてくれるでしょう。

あゝ、そんな大阪に生を授かり、暮らしているのです。

そろそろ、「文化不毛の地」から脱出しようかな。

2月 05

10日(日)、シネ・リーブル梅田で『ちいさな独裁者』のトークイベント~(^_-)-☆

第2次世界大戦終結から74年が経ちますが、今なおヒトラー、ナチス・ドイツ、ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)をテーマにした映画が相次いで製作されています。

「負の遺産」を風化させまいとする映画人の気概に大いにリスペクトしています。

8日から公開の『ちいさな独裁者』もそうです。

ドイツ敗戦の直前、一介の若い脱走兵が将校の軍服をまとったことから、嘘を塗り固めて暴君と化していく様をスリリングに描かれています。

これ、実話なんです!

ぼくはゆめゆめドイツや戦争映画の専門家ではないのですが、シネ・リーブル梅田で10日(日)14時の回の上映終了後、16時からトークイベントをすることになりました。

お時間が許せば、本作を観て、ぼくの拙い話をお聴きくださいませ。

映画のHP:http://dokusaisha-movie.jp/

1月 19

新人監督、広瀬奈々子のデビュー作『夜明け』

サスペンス風に不穏な空気を放ちながら人間を凝視する。

それも対象は弱者。

シンプルな物語の中に生きる本質をほのかに浮かび上がらせた秀作が生まれた。

©2019「夜明け」製作委員会

監督は自身のオリジナル脚本によって本作でデビューした広瀬奈々子。

家族ドラマで定評のある是枝裕和、西川美和両監督の秘蔵っ子的な新鋭である。

川辺で倒れている青年(柳楽優弥)を男やもめの哲郎(小林薫)が自宅へ連れてくるシーンから始まる。

©2019「夜明け」製作委員会

その若者が「シンイチ」と名乗った瞬間、中年男の心がざわめいた。

亡き息子と同じ名前だったのだ。

素性を語らず、常に陰鬱な表情。

見るからに訳ありで不気味。

©2019「夜明け」製作委員会

そんな風来坊を哲郎が自宅に住まわせ、自分の木工所で働かせる。

そこからドラマが深化し、ぐいぐい引きずり込まされる。

親子のように寄り添う2人。

そこに歪な関係が芽生えてくる……。

©2019「夜明け」製作委員会

広瀬監督が大学卒業後の半年間、悶々とした経験を基に考案されたという。

人生に挫折し、不安定な青年は監督の自画像なのだろう。

映画ではしかし、感情移入せず、距離を置いて客観視している。

シンイチは木工所で他の従業員と打ち解け、社会生活を始める。

©2019「夜明け」製作委員会

しかしどこか罪の意識を感じさせ、犯罪者ではないかという疑念を抱かせる。

その辺りの心理描写は見事だ。

少しずつ青年の素顔が暴かれ、同時に哲郎の本性も顕在化してくる。

共に過去を清算しようとしているのに、むしろ甦ってくるところが無性に哀しい。

©2019「夜明け」製作委員会

最近の出演作では弾けた役の多い柳楽が、ここでは捉えどころのない人物に扮し、抑制の利いた演技を貫いた。

一方、小林は次第に狂気じみてくる男を存在感たっぷりに演じ切った。

©2019「夜明け」製作委員会

意表をつく結末が用意されている。

凄い映画だった。

広瀬監督の次回作が楽しみだ。

1時間53分

★★★★(見逃せない)

☆関西ではシネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、MOVIX京都、MOVIXあまがさき にて公開。

(日本経済新聞夕刊に2019年1月18日に掲載。許可のない転載は禁じます)

1月 12

素人ヨットマンの奇抜な行動~英国映画『喜望峰の風に乗せて』

英国を代表する名優コリン・ファースが孤高のヨットマンに扮する海洋ドラマ。

てっきり男のロマンをテーマにした冒険映画と思いきや、全く想定外の展開。

実話と知って驚いた。

(C)STUDIOCANAL S.A.S 2017

1968年、英国で単独無寄港世界一周ヨットレースが開催され、脱サラの起業家ドナルド(ファース)が参加した。

独自開発の船舶用測定器が売れず、金銭的に困窮する中、賞金目当てで出場を決意したのだ。

(C)STUDIOCANAL S.A.S 2017

素人ヨットマンとあって、マスメディアに注目され、時の人になっていく。

さらに資産家からの投資話が絡み、どんどん大騒ぎに。

(C)STUDIOCANAL S.A.S 2017

その翻弄される様が何とも滑稽である。

ドナルドは3人の幼い子を持つ父親。

(C)STUDIOCANAL S.A.S 2017

レース出場に反対する愛妻クレア(レイチェル・ワイズ)との微妙な心模様が浮き彫りにされるにつれ、家族の物語であることに気づかされる。

(C)STUDIOCANAL S.A.S 2017

(C)STUDIOCANAL S.A.S 2017

ヒーローになって妻子を喜ばせ、国民の期待に応えたい。

失敗続きの男が今こそ再生できると思い、自分で設計したヨットで出航する姿には共感できる。

(C)STUDIOCANAL S.A.S 2017

海上に出てからは一人劇。

トラブル続出で孤軍奮闘の主人公と熱狂の本国との対比、彼の武勇伝を書く新聞記者(デヴィッド・シューリス)との通信のやり取り……。

(C)STUDIOCANAL S.A.S 2017

メリハリをつけ、飽きさせなかった。

やがてドナルドはとんでもない行動に出て、映画の様相が激変する。

ジェームズ・マーシュ監督は苦悶する彼に肉迫するも、この重要なシークエンスの描き方がやや単調で弱かった。

ファースの演技は申し分ない。

チャレンジ精神、見栄、弱音、偽善性、家族愛……。

すべての面において完璧に演じ切った。

孤愁が似合う男の日焼けした顔が絵になっていた。

(C)STUDIOCANAL S.A.S 2017

一介の庶民が大舞台に立たった時の身の振り方。

そこに人間の本性が垣間見られる。

その意味で濃厚なヒューマン・ドラマだった。

1時間41分

★★★(見応えあり)

☆大阪ステーションシティシネマ、京都・TOHOシネマズ二条、シネ・リーブル神戸ほかで公開中

(日本経済新聞夕刊に2019年1月11日に掲載。許可のない転載は禁じます)

12月 23

講演会『映画のはじまり、みな大阪』のお知らせです~(^_-)-☆

『映画のはじまり、みな大阪』

こんな演題で来年2月9日(土)午後2時~、大阪市立中央図書館で講演します。

映画上映、興行、活動弁士、大スター、映画本……。

みな大阪が発祥地で、大阪人が絡んでいます。

そんな大阪と映画との深~い関わりをたっぷりお話しします。

先着順。

何と無料ですよ~!!

ご興味があれば、お気軽にどうぞ~(^_-)-☆

12月 22

ホロコーストを生き延びたユダヤ人老人の故郷へのロードムービー『家(うち)へ帰ろう』(今日から公開)

けさ、ABC朝日放送テレビの朝のワイド番組『おはよう朝日 土曜日です』にゲスト出演してきました。

お正月のおススメ映画の解説。

5本取り上げましたが、最後に熱っぽく語った映画が本作でした。

     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆

ナチス・ドイツによるホロコースト(大量虐殺)が絡む映画では異色作に属する。

自らのアイデンティティーを確認するため、郷里への一人旅を敢行する老人の物語。

人との触れ合いがことさら胸に響く。

Ⓒ2016 HERNÁNDEZ y FERNÁNDEZ Producciones cinematograficas S.L., TORNASOL FILMS, S.A RESCATE PRODUCCIONES A.I.E., ZAMPA AUDIOVISUAL, S.L., HADDOCK FILMS, PATAGONIK FILM GROUP S.A.

監督はユダヤ系アルゼンチン人のパブロ・ソラルス。

祖父の前では、「ポーランド」の言葉を発するのがタブーだったという記憶を基に脚本を執筆した。

ブエノスアイレスで仕立屋を営む88歳のアブラハムが老人施設に入る前夜、自宅を抜け出し、単身、飛行機でスペインへ飛ぶ。

手には自ら仕立てた背広。

彼はポーランドの地方都市で生まれ育った。

第2次大戦中、ユダヤ人ゆえ強制収容所に移送されたが、辛くも逃げ延びていた。

その時に傷つけられた右脚を今なお引きずって歩く。

郷里へは二度と戻らないと決めていたのに、使命感に突き動かされ、故国に向かう。

70年間、音信不通の親友との再会を願って……。

Ⓒ2016 HERNÁNDEZ y FERNÁNDEZ Producciones cinematograficas S.L., TORNASOL FILMS, S.A RESCATE PRODUCCIONES A.I.E., ZAMPA AUDIOVISUAL, S.L., HADDOCK FILMS, PATAGONIK FILM GROUP S.A.

そこに背広の重要性が秘められており、物語がにわかに深化していく。

マドリッドから鉄道を利用するも、忌み嫌うドイツの経由を断固、拒む。

このように意地っ張りで気難しく、それでいてどこか憎めない老人をアルゼンチンの名優ミゲル・アンヘル・ソラが見事に演じ切った。

見ていてハラハラさせるこの爺さんに女性たちが力を添える。

ホテルの女主人、ドイツの女性文化人類学者、看護師……。

Ⓒ2016 HERNÁNDEZ y FERNÁNDEZ Producciones cinematograficas S.L., TORNASOL FILMS, S.A RESCATE PRODUCCIONES A.I.E., ZAMPA AUDIOVISUAL, S.L., HADDOCK FILMS, PATAGONIK FILM GROUP S.A.

彼女たちとの関わりが実に温かく、しなやかに描かれていた。

疎遠な末娘と会う脇筋が光っていた。

彼女の腕には収容所番号の入れ墨。

父親の苦しみを受け継ぐ証しである。

これぞ細部にこだわった演出であろう。

Ⓒ2016 HERNÁNDEZ y FERNÁNDEZ Producciones cinematograficas S.L., TORNASOL FILMS, S.A RESCATE PRODUCCIONES A.I.E., ZAMPA AUDIOVISUAL, S.L., HADDOCK FILMS, PATAGONIK FILM GROUP S.A.

「友情」と「約束」。

2つのキーワードがラストで前面に迫ってくる心に染み入るロードムービーだった。

1時間33分  

★★★★(見逃せない)

☆12月22日(土)~シネ・リーブル梅田、 京都シネマ、 シネ・リーブル神戸にて公開

(日本経済新聞夕刊に2018年12月21日に掲載。許可のない転載は禁じます)

12月 20

22日(土)、ABCテレビ朝のワイド番組『おはよう朝日です』に出演します~(^_-)-☆

ちょっとお知らせです。

22日(土)、朝日放送(ABC)テレビ朝のワイド番組『おはよう朝日です』に出演することになりました~😁

オススメのお正月映画の紹介です。

映画評論家ではないし、他に映画を語れる人がぎょうさんいてはるのに、何でぼくなん?

よぉ喋るし、面白いからでしょうか。

ハハハ、寄席芸人ですがな(笑)

出演時間は午前6時58分から15分間だけです。

喋り足らんやろな~😅

それに、低血圧で朝は苦手。

というか、起きれるのかが最大の心配事です。

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