Category Archive: 映画

8月 17

時代劇大作『関ヶ原』……26日から公開

天下分け目の戦い、関ヶ原の合戦。

司馬遼太郎さんの原作を映画化した『関ヶ原』が26日から公開されます。

どちらかと言えば、地味な石田三成に光を当てています。

映画ファンのための感動サイト「シネルフレ(Cinereflet)」の『武部好伸のシネマエッセイ』で、この映画や関ヶ原について好き放題に書いています(笑)

戦国モノは、いろんな意味で面白いですね~(^_-)-☆

URLは以下です。

http://cineref.com/review/2017/07/post-816.html

7月 28

芯のある青春映画~『君の膵臓をたべたい』

意表を突くタイトルで話題になったベストセラー小説(著者・住野よる)の実写映画化。

単なるお涙頂戴モノに終わらせず、生きることを真正面から見据えた、芯のある青春映画に仕上がっている。

©2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 ©住野よる/双葉社

明朗快活な高校2年生の桜良(浜辺美波)はクラスの人気者だが、実は重い膵臓病を患っている。

読書好きの同級生の僕(北村匠海)がそのことを知るや、彼女が急接近する。

2人が図書委員というのがミソ。

©2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 ©住野よる/双葉社

原作とは異なり、12年後に母校の高校教師になった僕(小栗旬)が、取り壊される図書館で蔵書の整理中に高校時代を回想する。

©2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 ©住野よる/双葉社

過去と現在との交錯。

映画的にはこの方が向いている。

舞台となる図書館の佇まいが素晴らしい。

ヒロインを想起させる窓の外の桜花、その窓から降り注ぐ穏やかな陽光。

これが映画の淡いトーンを決めていた。

2人の距離感が非常に曖昧だ。

©2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 ©住野よる/双葉社

一緒に福岡まで旅に出かけるのに、恋人ではない。

かといって友達でもない。

そんな既成の感情では推し量れない〈絆〉が彼らを結びつけている。

日々、ひたむきに生きようとする桜良と、何とか彼女に寄り添おうとする僕。

物語の核心ともいうべきこの関係性を月川翔監督はあえてスケッチ風に軽やかに描いた。

それが功を奏したといえる。

©2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 ©住野よる/双葉社

2人は純粋で初々しい。

そこに切なさと儚さを加味させ、嫌味のないヒューマンドラマへと昇華させた。

ただ綺麗ごとが多い。

少し毒気を添えてほしかった。 

成人になった桜良の親友、恭子(北川景子)がウエディングドレス姿で号泣するシーンは胸に染み入る。

©2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 ©住野よる/双葉社

この長回しはクライマックスとして見ごたえ十分。

大人からすれば、こんな青春譚は青臭く感じられ、観るのを躊躇しがち。

でも偏見を捨て、本作と向き合ってほしい。

何かビビッとくるはず。

©2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 ©住野よる/双葉社

1時間55分

★★★★(見逃せない)

☆TOHOシネマズ梅田ほかで公開中

(日本経済新聞夕刊に2017年7月28日に掲載。許可のない転載は禁じます)

7月 11

50年前の長編大作『人間の條件』を観賞した主演、仲代逹矢さんの舞台挨拶~(^_-)-☆

今宵、梅田の映画館でのハリウッド映画完成披露試写会をキャンセルし、九条のミニシアター「シネ・ヌーヴォ」へ駆けつけました~💨🏃

同映画館で開催中の『生誕101年 小林正樹映画祭 反骨の美学』で、小林監督の代表作『人間の條件』(1959~61年)全6部が一挙上映されています。

この作品に主演した84歳の御大、仲代達矢さんが本作を鑑賞するために来館し、舞台挨拶をされました。

出演時は20代後半でした~❗

仲代さんを間近で目にできる最後のチャンスと思い、予定を変更した次第。

さすが圧倒的な存在感でした。

「『人間の條件』は偉大なるリアリズムの映画。軍国少年だった自分が、こういう骨太な反戦映画に出演でき、運命的なものを感じています」

「昔の日本映画は、スタントマンなんていないから、役者が体当たりで演技し、ゲンコツで殴られたりしてひどい目に遭いました(笑)。でも、絵(映画)になって素晴らしいものになればいいなと思っていました」

さらにこんな裏話もーー。『人間の條件』の1、2部を撮ったあと、半年の休暇期間中に黒澤明監督から声がかかり、『用心棒』に出演。3、4部のあとの休みに『椿三十郎』の撮影に臨んだーーなどなど。

こうした生きた証言を肉声で聞くことができ、ほんまに、ほんまにうれしかったです~💡😁

仲代さんは、明日(12日)も『人間の條件』完結編をシネ・ヌーヴォでご覧になられ、そのあと舞台挨拶されます(午後3時40分ごろ)。

蛇足ーー。この映画、学生時代に全6部を通しで観ました。戦争に巻き込まれたら、ヒューマニズムなんて呆気なく吹き飛んでしまう、そのことを強く実感した忘れ難き作品です。

7月 07

夫婦で地道な反ナチ抵抗活動~『ヒトラーへの285枚に葉書』

ミュンヘン大学での白バラ抵抗運動、ヒトラー暗殺未遂事件……。

第二次大戦中、ドイツ国内での反ナチ活動を題材にした映画が少なからず作られてきた。

その中で、市井の民を主人公にした本作は異色作といえよう。

© X Filme Creative Pool GmbH / Master Movies / Alone in Berlin Ltd / Pathé Production / Buffalo Films 2016

首都ベルリンで暮らす職工夫婦による国家反逆事件。

2010年に原作小説が英訳され、全世界で話題を呼んだ。

その流れで英語劇になったが、やはりドイツ語で撮ってほしかった。

© X Filme Creative Pool GmbH / Master Movies / Alone in Berlin Ltd / Pathé Production / Buffalo Films 2016

1940年6月、オットーとアンナの夫婦の元に出征した1人息子の戦死通知が届く。

たった1枚の無情な紙入れ……。

人間の尊厳が全く感じられない。

それがオットーの怒りを駆り立てた。

「総統は私の息子を殺した。あなたの息子も殺されるだろう」

こんなメッセージを記したカードを人目のつく場所に置いた。

これを機にヒトラーを告発する内容へとエスカレート。

元々はわが子への愛情と贖罪から発した行動。

その地道な活動は約2年間も続き、市内各所に置かれたメッセージカードは285枚に達した。

© X Filme Creative Pool GmbH / Master Movies / Alone in Berlin Ltd / Pathé Production / Buffalo Films 2016

組織的な抵抗運動と睨んでいたゲシュタポ(秘密警察)の担当警部(ダニエル・ブリュール)が捜査方針を転換させてからの動きが実にスリリング。

サスペンス映画としても観させる。

夫婦が住むアパートには反体制的な判事、身を隠すユダヤ人女性、筋金入りのナチス党員、密告者らが暮らしている。

まさに当時のドイツ社会の縮図だ。

© X Filme Creative Pool GmbH / Master Movies / Alone in Berlin Ltd / Pathé Production / Buffalo Films 2016

英語劇なので、ブレンダン・グリーソン(アイルランド人)とエマ・トンプソン(英国人)という外国人俳優を主演に起用した。

しかし共に超演技派とあって、違和感を覚えなかった。

© X Filme Creative Pool GmbH / Master Movies / Alone in Berlin Ltd / Pathé Production / Buffalo Films 2016

スイス人のヴァンサン・ペルース監督は畏敬の念を持って勇気ある夫婦の姿を映像に再現させた。

こういう実話は絶対に風化させてはならないと強く思った。

1時間43分

★★★★(見逃せない)

☆7月8日(土)シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、7且29日(土)京都シネマ

(日本経済新聞夕刊に2017年7月7日に掲載。許可のない転載は禁じます)

6月 23

アンジェイ・ワイダ監督の遺作『残像』、24日から公開

Ⓒ 2016 Akson Studio Sp. z o.o, Telewizja Polska S.A, EC 1 – Łódz Miasto Kultury, Narodowy Instytut Audiowizualny, Festiwal Filmowy Camerimage- Fundacja Tumult All Rights Reserved.

ポーランドの世界的な巨匠アンジェイ・ワイダの遺作。

昨年10月、90歳で他界した監督が、実在した芸術家の強靭な生き方を通して普遍的なメッセージを残した。

それは表現の自由の尊さを忘れてはならないということだ。

Ⓒ 2016 Akson Studio Sp. z o.o, Telewizja Polska S.A, EC 1 – Łódz Miasto Kultury, Narodowy Instytut Audiowizualny, Festiwal Filmowy Camerimage- Fundacja Tumult All Rights Reserved.

前衛画家ストゥシュミンスキ(1893~1952)は第一次大戦中、事故で左腕と右脚をなくし、松葉づえが欠かせない。

それをバネにして創作に励み、第二次大戦前には彼の絵画と美術理論が国内外で高く評価された。

Ⓒ 2016 Akson Studio Sp. z o.o, Telewizja Polska S.A, EC 1 – Łódz Miasto Kultury, Narodowy Instytut Audiowizualny, Festiwal Filmowy Camerimage- Fundacja Tumult All Rights Reserved.

戦後は一転、状況が激変する。

祖国がソ連主導の社会主義体制に組み込まれ、芸術にも政治性が要求されるようになった。

映画は画家の最晩年の4年間(49~52年)に絞られる。

自宅のアトリエで創作していると、室内が赤く染まってくる。

スターリンの肖像を描いた巨大な赤い垂れ幕が窓を覆ったからだ。

国家権力が不気味に忍び寄る象徴的なシーンだ。

その垂れ幕を松葉づえで破り、逮捕される。

そこから骨太なドラマが始まる。

Ⓒ 2016 Akson Studio Sp. z o.o, Telewizja Polska S.A, EC 1 – Łódz Miasto Kultury, Narodowy Instytut Audiowizualny, Festiwal Filmowy Camerimage- Fundacja Tumult All Rights Reserved.

抽象画を無用の長物と見なす政府に対し、主人公は果敢に意義を唱え、表現の自由を主張するのだ。

誰もが体制にしがみつき、口を閉ざす中、かくも信念を貫き通すとは、よほどの勇気と不屈の精神がないとできない。

かといって、この人物を英雄視しない。

家族を軽んじ、一人娘を傷つけてしまう、そんな弱さもあけすけと見せる。

大学の教え子が何かとサポートするも、窮地に追いやられる。

Ⓒ 2016 Akson Studio Sp. z o.o, Telewizja Polska S.A, EC 1 – Łódz Miasto Kultury, Narodowy Instytut Audiowizualny, Festiwal Filmowy Camerimage- Fundacja Tumult All Rights Reserved.

迫害と弾圧。

基本的人権を容赦なく剥奪する国家の素顔が一番、恐ろしく感じられた。

現代でも同じことが繰り返されている。

警鐘と受け止めたい。

Ⓒ 2016 Akson Studio Sp. z o.o, Telewizja Polska S.A, EC 1 – Łódz Miasto Kultury, Narodowy Instytut Audiowizualny, Festiwal Filmowy Camerimage- Fundacja Tumult All Rights Reserved.

6年前、古都クラフクで奇跡的にワイダ監督と出会えた。

その時、「1989年に自由を得た民主化達成が何よりも嬉しい」と話してくれた。

自国の現代史を検証してきた監督の遺志が本作からにじみ出ていた。

1時間39分。

★★★★(見逃せない)

☆6月24日(土)~シネ・リーブル梅田
7月1日(土)~シネ・リーブル神戸
7月22日(土)京都シネマ にて順次公開

(日本経済新聞夕刊に2017年6月23日に掲載。許可のない転載は禁じます)

6月 12

「ケルト」の守護神、アーサー王を新しい観点から斬った『キング・アーサー』(17日公開)

アーサー王――。

 

超有名な御仁とあって、これまで何度、映画化されてきたことか。

英国映画界の俊英ガイ・リッチー監督の『キング・アーサー』(17日公開)は、独特な解釈で描かれた新機軸のアーサー王物語です。

 

映画ファンのための感動サイト「シネ ルフレ(Cine reflet)」の〈武部好伸のシネマエッセイ〉に、アーサー王伝説の成立過程やバックボーンなどをわかりやすく解説しています。

 

やや長文になっていますが、お気軽に目を通していただければ幸いです。

6月 03

大阪、映画はじめて物語~!! ムック『大人の大阪本』に掲載

 

『大人の大阪本』(京阪神エルマガジン社)

 

こんなムックが5日、書店に並びます。

 

落語&お酒、美術、映画、建築、古地図、絵葉書、寿司、昆布だし、割烹。

 

こんな切り口で大阪を斬った読み物です。

 

その中の映画の章をぼくが執筆しました。

 

題して、『大阪、映画はじまり物語。』。

 

拙著『大阪「映画」事始め』(彩流社)をベースに、6ページにわたって、大阪と映画との関わりをまとめました。

 

「大阪の街を歩きたくなる映画ガイド。」も付けています。

 

ぜひ、お手に取ってお読みください~(^_-)-☆

 

定価は本体880円+税

 

6月 03

仲代逹矢と向き合った映画~『海辺のリア』(3日から公開)

仲代達矢、84歳。

日本を代表する名優をそのまま描いた映画。

題名のごとく、シェークスピアの悲劇『リア王』をモチーフに渾身の演技が披露される。

超高齢化社会の一断面を切り取った家族ドラマでもある。

(c)「海辺のリア」製作委員会

『春との旅』(2010年)、『日本の悲劇』(12年)に続き、小林政広監督が三度、仲代を主演に起用した。

正確に言えば、この俳優のために撮った映画ともいえる。

主人公の名前は桑畑兆吉。

黒澤時代劇『用心棒』(1961年)で仲代が共演した三船敏郎の役名、桑畑三十郎を彷彿とさせる。

映画黄金期を共に支えた盟友に対するリスペクトなのだろう。

その桑畑がパジャマ姿にコートを羽織り、キャリーバックを引きずり、意味不明の言葉を発しながら浜辺を彷徨する。

何とも異様な姿に圧倒される。

この老人は映画、舞台で半世紀以上もキャリアを積み、俳優養成所を主宰してきた著名な役者だ。

まさに仲代、その人。

今やしかし、世間から忘れられ、認知症の兆しが出てきている。

長女、由紀子(原田美枝子)が愛人の謎めいた運転手(小林薫)と奸計をめぐらす。

(c)「海辺のリア」製作委員会

 

(c)「海辺のリア」製作委員会

 

彼女の夫で、桑畑の弟子の行男(阿部寛)は師匠が不憫でならない。

かといって妻には逆らえない。

 

(c)「海辺のリア」製作委員会

 

施設を脱走した老人が海辺で別の女性に産ませた娘、伸子(黒木華)と偶然、再会する。

まずあり得ない設定だが、演劇的な映画と思えば納得できる。

2人のちぐはぐなやり取りが秀逸だ。

 

(c)「海辺のリア」製作委員会

 

登場人物は実力派俳優による5人だけ。

そこでリア王の世界があぶり出される。

桑畑が狂気をはらませ、邪険にしてきた伸子にリア王の誠実な末娘コーディリアを重ね合わせていく終盤は圧巻の一言だ。

演技が重すぎて、抵抗を覚えるかもしれない。

しかもリア王の物語を知らないと、面白みが半減する。

それを承知で真正面から仲代に向き合った小林監督の姿勢に敬意を表したい。

1時間45分

★★★★(見逃せない)

☆3日からテアトル梅田ほかで公開

(日本経済新聞夕刊に2017年6月2日に掲載。許可のない転載は禁じます)

5月 19

叔父と甥の滋味深い物語~『マンチェスター・バイ・ザ・シー』公開中

マンチェスターの名から英国の映画と勘違いしそうだが、題名は米国東海岸の保養地で、その町を舞台に叔父と甥の触れ合いが描かれる。

絶望から再生へと一歩踏み出す姿をどこまでも寄り添って見据えた珠玉の人間ドラマだ。

© 2016 K Films Manchester LLC. All Rights Reserved.

便利屋として働く独り者のリー(ケイシー・アフレック)は不愛想で、不機嫌極まりない。

そんな彼が、兄チャンドラー(カイル・チャンドラー)の突然死で、1人息子パトリック(ルーカス・ヘッジズ)の後見人になる。

想定外の展開に戸惑うばかり。

© 2016 K Films Manchester LLC. All Rights Reserved.

甥は16歳の高校生。

父の死を受け止めてはいるが、やはり動揺を隠しきれない。

それでもスポーツやバンド活動、ガールフレンドとの交際と青春を満喫している。

片やリーはかつてこの町で言いようもなく辛い体験をした。

元妻ランディ(ミシェル・ウィリアムズ)との幸せな日々を回顧しながらも、その悲劇と常に向き合っている。

帰郷してからは情緒が不安定で、苦悶の表情を浮かべる。

一刻も早く町から抜け出したい。

彼の暗い心象が、冬枯れの光景と相まって映画の通奏低音をなす。

© 2016 K Films Manchester LLC. All Rights Reserved.

親子とはまた異なる、叔父と甥の微妙でぎこちない関係。

しかも別世界で生きているだけに、当然、2人の間に摩擦や確執が生じる。

その距離感を、脚本も書いたケネス・ロナーガン監督が過去と現在を交錯させ、慎み深く映し出す。

互いに弱さを共有するところが胸に染み入る。

本作で今年のアカデミー賞主演男優賞を受賞したアフレックの演技が素晴らしい。

拭い去れない痛みと哀しみを体の芯から表現していた。

元妻と偶然、鉢合わせした時の凍り付いた反応がとりわけ印象深い。

 

© 2016 K Films Manchester LLC. All Rights Reserved.

逆境の中での新たな出会。

それが一筋の光明を見出させる。

2人が一緒に釣り糸を垂れるラストシーンの余韻が脳裏から離れない。

本当に滋味深い映画だった。

2時間17分

★★★★★(今年有数の傑作)

☆テアトル梅田、なんばパークスシネマほか全国ロードショー

(日本経済新聞夕刊に2017年5月19日に掲載。許可のない転載は禁じます)

5月 12

才能あふれる瀬田なつき監督の新作、『PARKS パークス』公開中

(C)2017本田プロモーションBAUS

涼風がそよぐ、そんな爽やかな映画だ。

 

公園そのものが主役で、そこにたおやかな音楽が絡む。

 

ファンタジックなポエムのような、それでいて芯のある青春ドラマに仕上がっていた。

 

東京の「井の頭公園」開園100周年記念映画。

 

この公園と全く縁のない大阪出身の瀬田なつき監督が感性豊かに映像を紡ぎ出した。

 

冒頭、満開の桜花の下、女子大生の純(橋本愛)が軽快に自転車のペダルをこぐ。

 

何とも淡い感触。

 

一気に映画の世界に引きずり込ませる。

 

公園脇のアパートで暮らす純は恋人に去られ、大学留年の危機にある。

 

全てがうまくいかない。

 

そんな彼女の元に女子高生のハル(永野芽郁)が訪れる。

 

亡き父親の過去を探るハルの謎めいたキャラクターと浮遊感が独特な彩りを添える。

 

永野の吹っ切れた演技がことさら印象深い。

 

やがて50年前に父親と恋人がテープに残した未完のラブソングが見つかる。

 

(C)2017本田プロモーションBAUS

 

その女性の孫トキオ(染谷将太)を巻き込み、3人で曲を完成させる。

 

本筋に至るまでの経緯がやや複雑。

 

それでもしなやかに物語を形作っていく瀬田監督の演出は見事としか言いようがない。

 

1960年代に刻まれた青春時代の記憶と現在の情景が重層的に交錯する中、音楽がクロスオーバーしながら前面に浮き上がってくる。

(C)2017本田プロモーションBAUS

全37曲。全編を包み込むサウンドが耳に心地よい。

 

ギターを弾き語る橋本の伸びやかな歌声が胸に響く。

(C)2017本田プロモーションBAUS

ミュージカルをまねたシーンも添えられ、どこまでも自由で開放的な作風。

 

それが本作のエッセンスだ。

 

自然光を採り入れた映像はカラッと明るい。

 

軽やかさを強調させるため、風と草木の音を視覚的に描いたのも効果的だった。

 

気がつけば、公園、音楽、映像が一体化していた。

 

何だか夢見心地に浸れた気分。

 

不思議な映画である。

 

1時間58分。

 

★★★★(見逃せない)

 

☆シネ・リーブル梅田で公開中、13日から神戸国際松竹で公開

 

(日本経済新聞夕刊に2017年5月12日に掲載。許可のない転載は禁じます)

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