Category Archive: 映画

6月 23

アンジェイ・ワイダ監督の遺作『残像』、24日から公開

Ⓒ 2016 Akson Studio Sp. z o.o, Telewizja Polska S.A, EC 1 – Łódz Miasto Kultury, Narodowy Instytut Audiowizualny, Festiwal Filmowy Camerimage- Fundacja Tumult All Rights Reserved.

ポーランドの世界的な巨匠アンジェイ・ワイダの遺作。

昨年10月、90歳で他界した監督が、実在した芸術家の強靭な生き方を通して普遍的なメッセージを残した。

それは表現の自由の尊さを忘れてはならないということだ。

Ⓒ 2016 Akson Studio Sp. z o.o, Telewizja Polska S.A, EC 1 – Łódz Miasto Kultury, Narodowy Instytut Audiowizualny, Festiwal Filmowy Camerimage- Fundacja Tumult All Rights Reserved.

前衛画家ストゥシュミンスキ(1893~1952)は第一次大戦中、事故で左腕と右脚をなくし、松葉づえが欠かせない。

それをバネにして創作に励み、第二次大戦前には彼の絵画と美術理論が国内外で高く評価された。

Ⓒ 2016 Akson Studio Sp. z o.o, Telewizja Polska S.A, EC 1 – Łódz Miasto Kultury, Narodowy Instytut Audiowizualny, Festiwal Filmowy Camerimage- Fundacja Tumult All Rights Reserved.

戦後は一転、状況が激変する。

祖国がソ連主導の社会主義体制に組み込まれ、芸術にも政治性が要求されるようになった。

映画は画家の最晩年の4年間(49~52年)に絞られる。

自宅のアトリエで創作していると、室内が赤く染まってくる。

スターリンの肖像を描いた巨大な赤い垂れ幕が窓を覆ったからだ。

国家権力が不気味に忍び寄る象徴的なシーンだ。

その垂れ幕を松葉づえで破り、逮捕される。

そこから骨太なドラマが始まる。

Ⓒ 2016 Akson Studio Sp. z o.o, Telewizja Polska S.A, EC 1 – Łódz Miasto Kultury, Narodowy Instytut Audiowizualny, Festiwal Filmowy Camerimage- Fundacja Tumult All Rights Reserved.

抽象画を無用の長物と見なす政府に対し、主人公は果敢に意義を唱え、表現の自由を主張するのだ。

誰もが体制にしがみつき、口を閉ざす中、かくも信念を貫き通すとは、よほどの勇気と不屈の精神がないとできない。

かといって、この人物を英雄視しない。

家族を軽んじ、一人娘を傷つけてしまう、そんな弱さもあけすけと見せる。

大学の教え子が何かとサポートするも、窮地に追いやられる。

Ⓒ 2016 Akson Studio Sp. z o.o, Telewizja Polska S.A, EC 1 – Łódz Miasto Kultury, Narodowy Instytut Audiowizualny, Festiwal Filmowy Camerimage- Fundacja Tumult All Rights Reserved.

迫害と弾圧。

基本的人権を容赦なく剥奪する国家の素顔が一番、恐ろしく感じられた。

現代でも同じことが繰り返されている。

警鐘と受け止めたい。

Ⓒ 2016 Akson Studio Sp. z o.o, Telewizja Polska S.A, EC 1 – Łódz Miasto Kultury, Narodowy Instytut Audiowizualny, Festiwal Filmowy Camerimage- Fundacja Tumult All Rights Reserved.

6年前、古都クラフクで奇跡的にワイダ監督と出会えた。

その時、「1989年に自由を得た民主化達成が何よりも嬉しい」と話してくれた。

自国の現代史を検証してきた監督の遺志が本作からにじみ出ていた。

1時間39分。

★★★★(見逃せない)

☆6月24日(土)~シネ・リーブル梅田
7月1日(土)~シネ・リーブル神戸
7月22日(土)京都シネマ にて順次公開

(日本経済新聞夕刊に2017年6月23日に掲載。許可のない転載は禁じます)

6月 12

「ケルト」の守護神、アーサー王を新しい観点から斬った『キング・アーサー』(17日公開)

アーサー王――。

 

超有名な御仁とあって、これまで何度、映画化されてきたことか。

英国映画界の俊英ガイ・リッチー監督の『キング・アーサー』(17日公開)は、独特な解釈で描かれた新機軸のアーサー王物語です。

 

映画ファンのための感動サイト「シネ ルフレ(Cine reflet)」の〈武部好伸のシネマエッセイ〉に、アーサー王伝説の成立過程やバックボーンなどをわかりやすく解説しています。

 

やや長文になっていますが、お気軽に目を通していただければ幸いです。

6月 03

大阪、映画はじめて物語~!! ムック『大人の大阪本』に掲載

 

『大人の大阪本』(京阪神エルマガジン社)

 

こんなムックが5日、書店に並びます。

 

落語&お酒、美術、映画、建築、古地図、絵葉書、寿司、昆布だし、割烹。

 

こんな切り口で大阪を斬った読み物です。

 

その中の映画の章をぼくが執筆しました。

 

題して、『大阪、映画はじまり物語。』。

 

拙著『大阪「映画」事始め』(彩流社)をベースに、6ページにわたって、大阪と映画との関わりをまとめました。

 

「大阪の街を歩きたくなる映画ガイド。」も付けています。

 

ぜひ、お手に取ってお読みください~(^_-)-☆

 

定価は本体880円+税

 

6月 03

仲代逹矢と向き合った映画~『海辺のリア』(3日から公開)

仲代達矢、84歳。

日本を代表する名優をそのまま描いた映画。

題名のごとく、シェークスピアの悲劇『リア王』をモチーフに渾身の演技が披露される。

超高齢化社会の一断面を切り取った家族ドラマでもある。

(c)「海辺のリア」製作委員会

『春との旅』(2010年)、『日本の悲劇』(12年)に続き、小林政広監督が三度、仲代を主演に起用した。

正確に言えば、この俳優のために撮った映画ともいえる。

主人公の名前は桑畑兆吉。

黒澤時代劇『用心棒』(1961年)で仲代が共演した三船敏郎の役名、桑畑三十郎を彷彿とさせる。

映画黄金期を共に支えた盟友に対するリスペクトなのだろう。

その桑畑がパジャマ姿にコートを羽織り、キャリーバックを引きずり、意味不明の言葉を発しながら浜辺を彷徨する。

何とも異様な姿に圧倒される。

この老人は映画、舞台で半世紀以上もキャリアを積み、俳優養成所を主宰してきた著名な役者だ。

まさに仲代、その人。

今やしかし、世間から忘れられ、認知症の兆しが出てきている。

長女、由紀子(原田美枝子)が愛人の謎めいた運転手(小林薫)と奸計をめぐらす。

(c)「海辺のリア」製作委員会

 

(c)「海辺のリア」製作委員会

 

彼女の夫で、桑畑の弟子の行男(阿部寛)は師匠が不憫でならない。

かといって妻には逆らえない。

 

(c)「海辺のリア」製作委員会

 

施設を脱走した老人が海辺で別の女性に産ませた娘、伸子(黒木華)と偶然、再会する。

まずあり得ない設定だが、演劇的な映画と思えば納得できる。

2人のちぐはぐなやり取りが秀逸だ。

 

(c)「海辺のリア」製作委員会

 

登場人物は実力派俳優による5人だけ。

そこでリア王の世界があぶり出される。

桑畑が狂気をはらませ、邪険にしてきた伸子にリア王の誠実な末娘コーディリアを重ね合わせていく終盤は圧巻の一言だ。

演技が重すぎて、抵抗を覚えるかもしれない。

しかもリア王の物語を知らないと、面白みが半減する。

それを承知で真正面から仲代に向き合った小林監督の姿勢に敬意を表したい。

1時間45分

★★★★(見逃せない)

☆3日からテアトル梅田ほかで公開

(日本経済新聞夕刊に2017年6月2日に掲載。許可のない転載は禁じます)

5月 19

叔父と甥の滋味深い物語~『マンチェスター・バイ・ザ・シー』公開中

マンチェスターの名から英国の映画と勘違いしそうだが、題名は米国東海岸の保養地で、その町を舞台に叔父と甥の触れ合いが描かれる。

絶望から再生へと一歩踏み出す姿をどこまでも寄り添って見据えた珠玉の人間ドラマだ。

© 2016 K Films Manchester LLC. All Rights Reserved.

便利屋として働く独り者のリー(ケイシー・アフレック)は不愛想で、不機嫌極まりない。

そんな彼が、兄チャンドラー(カイル・チャンドラー)の突然死で、1人息子パトリック(ルーカス・ヘッジズ)の後見人になる。

想定外の展開に戸惑うばかり。

© 2016 K Films Manchester LLC. All Rights Reserved.

甥は16歳の高校生。

父の死を受け止めてはいるが、やはり動揺を隠しきれない。

それでもスポーツやバンド活動、ガールフレンドとの交際と青春を満喫している。

片やリーはかつてこの町で言いようもなく辛い体験をした。

元妻ランディ(ミシェル・ウィリアムズ)との幸せな日々を回顧しながらも、その悲劇と常に向き合っている。

帰郷してからは情緒が不安定で、苦悶の表情を浮かべる。

一刻も早く町から抜け出したい。

彼の暗い心象が、冬枯れの光景と相まって映画の通奏低音をなす。

© 2016 K Films Manchester LLC. All Rights Reserved.

親子とはまた異なる、叔父と甥の微妙でぎこちない関係。

しかも別世界で生きているだけに、当然、2人の間に摩擦や確執が生じる。

その距離感を、脚本も書いたケネス・ロナーガン監督が過去と現在を交錯させ、慎み深く映し出す。

互いに弱さを共有するところが胸に染み入る。

本作で今年のアカデミー賞主演男優賞を受賞したアフレックの演技が素晴らしい。

拭い去れない痛みと哀しみを体の芯から表現していた。

元妻と偶然、鉢合わせした時の凍り付いた反応がとりわけ印象深い。

 

© 2016 K Films Manchester LLC. All Rights Reserved.

逆境の中での新たな出会。

それが一筋の光明を見出させる。

2人が一緒に釣り糸を垂れるラストシーンの余韻が脳裏から離れない。

本当に滋味深い映画だった。

2時間17分

★★★★★(今年有数の傑作)

☆テアトル梅田、なんばパークスシネマほか全国ロードショー

(日本経済新聞夕刊に2017年5月19日に掲載。許可のない転載は禁じます)

5月 12

才能あふれる瀬田なつき監督の新作、『PARKS パークス』公開中

(C)2017本田プロモーションBAUS

涼風がそよぐ、そんな爽やかな映画だ。

 

公園そのものが主役で、そこにたおやかな音楽が絡む。

 

ファンタジックなポエムのような、それでいて芯のある青春ドラマに仕上がっていた。

 

東京の「井の頭公園」開園100周年記念映画。

 

この公園と全く縁のない大阪出身の瀬田なつき監督が感性豊かに映像を紡ぎ出した。

 

冒頭、満開の桜花の下、女子大生の純(橋本愛)が軽快に自転車のペダルをこぐ。

 

何とも淡い感触。

 

一気に映画の世界に引きずり込ませる。

 

公園脇のアパートで暮らす純は恋人に去られ、大学留年の危機にある。

 

全てがうまくいかない。

 

そんな彼女の元に女子高生のハル(永野芽郁)が訪れる。

 

亡き父親の過去を探るハルの謎めいたキャラクターと浮遊感が独特な彩りを添える。

 

永野の吹っ切れた演技がことさら印象深い。

 

やがて50年前に父親と恋人がテープに残した未完のラブソングが見つかる。

 

(C)2017本田プロモーションBAUS

 

その女性の孫トキオ(染谷将太)を巻き込み、3人で曲を完成させる。

 

本筋に至るまでの経緯がやや複雑。

 

それでもしなやかに物語を形作っていく瀬田監督の演出は見事としか言いようがない。

 

1960年代に刻まれた青春時代の記憶と現在の情景が重層的に交錯する中、音楽がクロスオーバーしながら前面に浮き上がってくる。

(C)2017本田プロモーションBAUS

全37曲。全編を包み込むサウンドが耳に心地よい。

 

ギターを弾き語る橋本の伸びやかな歌声が胸に響く。

(C)2017本田プロモーションBAUS

ミュージカルをまねたシーンも添えられ、どこまでも自由で開放的な作風。

 

それが本作のエッセンスだ。

 

自然光を採り入れた映像はカラッと明るい。

 

軽やかさを強調させるため、風と草木の音を視覚的に描いたのも効果的だった。

 

気がつけば、公園、音楽、映像が一体化していた。

 

何だか夢見心地に浸れた気分。

 

不思議な映画である。

 

1時間58分。

 

★★★★(見逃せない)

 

☆シネ・リーブル梅田で公開中、13日から神戸国際松竹で公開

 

(日本経済新聞夕刊に2017年5月12日に掲載。許可のない転載は禁じます)

4月 15

あの4人が再びスクリーンを疾駆する~『T2トレインスポッティング』公開中

 

あの4人が帰ってきた!

 

英国北部スコットランドを舞台に鮮烈な青春群像を描いた『トレインスポッティング』(1996年)の続編。

 

質的に前作よりもグレードアップしている。

 

ピカレスク(悪漢)映画の代表作になるだろう。

 

 

薬物漬けの4人組が闇取引で得た大金を仲間の1人レントンが持ち逃げした。

 

1作目のこの結末から20年後、オランダで会計士になっていた彼が悄然と故郷に戻ってくる。

 

レントンに扮したイアン・マクレガーをはじめ前作と同じ俳優が4人を演じる。

 

スタッフも同じだ。

 

壮年になっても、彼らはパッとせず、相変わらず社会の落ちこぼれ。

 

そこが映画の〈芯〉になっている。

 

 

シック・ボーイ(ジョニー・リー・ミラー)は売春やゆすりで稼ぐ。

 

ジャンキーのスパッド(ユエン・ブレムナー)は家族から愛想をつかされ、孤独に苦しむ。

 

レントンは起業を図るも、うまくいかず、失意の淵に沈む。

 

みな空回りばかり。

 

そんな3人に比べ、殺人罪で服役中のベグビーだけは異常なほどにエネルギッシュだ。

 

 

レントンへの復讐に燃える激情的な暴力男に扮したロバート・カーライルの煮えたぎる演技は圧巻の一言に尽きる。

 

エディンバラの街を疾駆した青春時代の一コマを随所に挿入し、郷愁を添えて時代の変遷を意識させる。

 

その一方で、シュールな映像でスタイリッシュな味をかもし出す。

 

軽快なテンポも健在。

 

ダニー・ボイル監督の職人肌的な演出が冴える。

 

女性はたくましくなっているのに、4人はいつまでも青年のまま。

 

しかし物事を見る目が多少なりとも養われた。

 

それを生かし、再生を求めて始動するひたむきな姿を活写する。

 

だからこそ爽やかに感じるのだ。

 

彼らの今後の行く末はいかに?

 

ここまで来たら、20年後の熟年期に三度、同じ俳優を使って第3弾を撮ってほしい。

 

1時間57分

 

★★★★★(今年有数の傑作)

 

☆全国で公開中

 

(日本経済新聞夕刊に2017年4月14日に掲載。許可のない転載は禁じます)

4月 09

不審死のナゾに迫る女医~異色サスペンス映画『午後8時の訪問者』

あの時、ああしておけばよかった……。

日々、後悔するのが世の常だが、そこに人の死が絡むとどうなるのか。

本作の主人公は自責の念と罪悪感にかられ、ストイックな行動に移す。

その姿を徹底的に追尾した異色サスペンス映画。

© LES FILMS DU FLEUVE – ARCHIPEL 35 – SAVAGE FILM – FRANCE 2 CINÉMA – VOO et Be tv – RTBF (Télévision belge)

女医ジェニー(アデル・エネル)は臨時で町の診療所に勤務している。

診療時間が過ぎた午後8時、玄関のベルが鳴るも、取り次がない。

翌朝、近くで身元不明の少女が遺体で見つかった。

何と昨夜、ドアホンを押した人物だった。

ジェニーの心がざわめき立つ。

あの時、玄関を開けようとした若い研修医に「患者に振り回されたらだめ」と諫めただけに、いっそう胸が締めつけられる。

© LES FILMS DU FLEUVE – ARCHIPEL 35 – SAVAGE FILM – FRANCE 2 CINÉMA – VOO et Be tv – RTBF (Télévision belge)

少女は何者なのだ。

なぜ診療所に駆け込んできたのか。

死因は? 

脳裏に湧き出る疑問を晴らすべく、刑事顔負けに町の住人に聞いて回る。

ここからカメラはひたすら彼女に肉迫する。

© LES FILMS DU FLEUVE – ARCHIPEL 35 – SAVAGE FILM – FRANCE 2 CINÉMA – VOO et Be tv – RTBF (Télévision belge)

監督はベルギーのジャン=ピエールとリュックのダルデンヌ兄弟。

これまでの手法通り、感情を入れずドキュメンタリータッチで淡々と描いていく。

ジェニーは近々、大病院へ赴任する有能な医師だが、患者への接し方が事務的でクールだ。

そんな彼女のキャラクターと作品の画風が重なり、非常にさばさばした空気が映像に充満する。

聞き込みで重要な情報を入手しても無表情。

そこに違和感を持つかもしれない。

© LES FILMS DU FLEUVE – ARCHIPEL 35 – SAVAGE FILM – FRANCE 2 CINÉMA – VOO et Be tv – RTBF (Télévision belge)

彼女はしかし、人との出会いによって確実に変わっていく。

それが監督の伝えたいところでもある。

前作『サンドラの週末』と同様、ヒロインに同調し、ぐいぐい引きずり込まれる。

長回しも効果的。

ただ、私生活に全く触れていない。

少し盛り込むと、作品に深みが出たと思うのだが……。

© LES FILMS DU FLEUVE – ARCHIPEL 35 – SAVAGE FILM – FRANCE 2 CINÉMA – VOO et Be tv – RTBF (Télévision belge)

彼女が脅されながらも追求した事案に欧州が抱える社会問題が潜んでいる。

その点も頭に入れておきたい。

1時間46分

★★★★(見逃せない)

☆8日からテアトル梅田ほかで公開

(日本経済新聞夕刊に2017年4月7日に掲載。許可のない転載は禁じます)

4月 04

日本初の映画上映地はなんばだった! 南海電鉄の情報紙に大きく掲載されました~(^.^)/~~~

南海電鉄の情報紙『NATTS(ナッツ)』4月号にドカーンと出ました!

カラーでこんなに大きく写真が載ったのは初めて。

121年前の明治29年(1896)12月、大阪・難波の福岡鉄工所で、心斎橋の舶来品輸入業、荒木和一さんが輸入した米国エジソン社製の映写機ヴァイタスコープによって日本初の映画上映が行われました。

この歴史的事実をメインにした拙著『大阪「映画」事始め』(彩流社)の紹介と、「難波が日本の映画のふるさと」であることを周知する記事です。

南海電鉄のお膝元である難波が映画興行と映画上映の発祥地。

1人でも多くの人にこのことを知ってもらいたいと切に願っています。

この情報紙はフリーペーパーで、南海の各駅や関連施設に置いてあるそうです。

3月 30

ケネディ暗殺から4日間の夫人に密着~米映画『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』

© 2016 Jackie Productions Limited

1963年11月22日、初の日米衛星中継でいきなり飛び込んできたのがケネディ大統領暗殺のニュースだった。

悲劇から葬儀までの4日間、大統領夫人ジャッキーこと、ジャクリーンの言動に迫る。

監督はチリ人のパブロ・ラライン。

© 2016 Jackie Productions Limited

ジャッキーと言えば、華麗なファーストレディをイメージするが、実は夫を引き立てる陰のプロデューサーでもあった。

この暗殺を題材にした映画やドラマが多々ある中で、夫人に焦点を当てたのは極めて珍しい。

副大統領の大統領就任宣言と司法解剖の立ち合い、転居の準備……。

© 2016 Jackie Productions Limited

悲嘆にくれる間もなく、ジャッキーは職務に翻弄される。

見方を変えれば、特別な存在から市井の人に戻るプロセスともいえる。

© 2016 Jackie Productions Limited

夫の伝説を忘れないでほしい。

その思いから、34歳の彼女が荘厳な国葬を取り仕切る。

© 2016 Jackie Productions Limited

そこが映画の見せ場。

司法長官の義弟ロバート(ピーター・サースガード)の忠言を受けながらも、決して信念を曲げない。

© 2016 Jackie Productions Limited

気品と知性があふれ、常に毅然とした態度で臨むも、時折、弱さを垣間見せる。

人生の激変期にあって、引き際の美学を求める姿が何ともいじらしい。

そんな主人公の人間的な面をナタリー・ポートマンが堂々たる演技で見せ切った。

近づき難い人物なのに、妙に親近感を抱かせる。

彼女の代表作になるだろう。

ケネディが在任中、「キャメロット」と呼ばれたホワイトハウスでの華やいだ日々と沈痛な空気が漂う現在とを対比。

そこに当時の記録映像を随所に挿入し、臨場感を高めていた。

後日、雑誌記者の取材を受けるジャッキーの回想形式で物語が展開する。

衣装や内装など細部にこだわった映像は全く飽きさせない。

ただ、生前の夫ケネディとの絡みが少なかったのが残念。

© 2016 Jackie Productions Limited

使命感を伴った内助の功。

心理面を重視した1人劇としても観させる。

1時間39分

★★★★(見逃せない)

☆31日から大阪ステーションシティシネマほかで公開

(日本経済新聞夕刊に2017年3月24日に掲載。許可のない転載は禁じます)

古い記事へ «