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筆者の詳細

登録日時: 2012年3月19日

バイオグラフィー

武部好伸(タケベ・ヨシノブ) 1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。関西大学非常勤講師。

最新記事

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  3. 韓国の骨太な社会派ドキュメンタリー映画『共犯者たち』&『スパイネーション 自白』 — 2018年12月9日
  4. Otomo!「大阪ストーリー」のエッセー、『「昭和」の大阪へタイム・トラベル』 — 2018年12月5日
  5. ジャジャジャーン、今年の映画ベストテンの発表です~(^_-)-☆ — 2018年12月3日

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12月 15

レディー・ガガが弾けた!!~音楽映画『アリー/ スター誕生』(21日から公開)

リメーク映画はよほど斬新でなければ成功しない。

4度目となる本作は、初主演の歌手レディー・ガガのボーカルを前面に打ち出した。

演技派俳優ブラッドリー・クーパーも主役を兼ねて初監督にチャレンジ。

初モノ尽くしが功を奏した。

(C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

人気歌手ジャクソン(クーパー)が場末のバーに立ち寄り、シャンソンの「ラ・ヴィ・アン・ローズ(バラ色の人生)」を歌うアリー(ガガ)の美声に魅せられる。

掴みとして申し分ない。

この男から誘われ、ステージで共演した彼女は歌手になる夢を実現できると感じ、ウエートレスを辞める。

同時に2人の間に恋情が芽生え、結ばれる。

(C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

非常に分かりやすい展開だ。

アリーが彼を有名人ではなく、人間として惹かれるところがミソ。

感性と相性が見事にマッチし、信頼を寄せ合っていく過程がほほ笑ましい。

その後は過去の「スタア(スター)誕生」と同様、妻が人気者になるにつれ、夫が堕ちていく。

温度差の大きさが嫉妬心と葛藤を増幅させる。

本音のぶつかり合いが映画の核心部分だ。

男が酒とドラッグに走るのは定石で、ここでも深みにはまり込んでいく。

それをアリーが仕事と両立させ、いかに歯止めをかけようとするか。

涙ぐましい奮闘が見せ場になっている。

(C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

自ら新曲を書き下ろしたガガの歌唱力が際立つ。

圧巻だ!!

ヒロインの生き方が、クラブのダンサーから今日の地位を築いた歌姫の足跡と重なって見える。

コンサートの場面では、全て舞台上の演者視線で撮影されており、内面描写に迫るためにクローズアップを多用。

ガガに負けじと歌声を披露したクーパーの演出が存外にこだわっていた。

全編、レディー・ガガの映画と言ってもいいかもしれない。

演技に対する熱量が半端ではなかった。

夫婦愛をドラマチックに描いた濃厚な音楽映画だった。

2時間16分

★★★★

☆12月21日(金) 大阪ステーションシティシネマほか全国公開

(日本経済新聞夕刊に2018年12月14日に掲載。許可のない転載は禁じます)

12月 11

最恐のエンターテインメント~『来る』(公開中)

映画ファンのための感動サイト「シネルフレ」で『武部好伸のシネマエッセイ』というコーナーを持たせてもらっています。

12月分は現在、公開中の日本映画『来る』です。

夜半、ウイスキーをちびちびやりながら、「遊び心」をめいっぱ盛り込んで書かせてもらいました。

以下に全文を掲載します。

~シュール、シュールで人の素顔を暴いてしまう「あれ」~

正直、怖い映画、ホラー系の映画は苦手です。『リング』(1998年)のテレビから出現する貞子。これは強烈でした。今でも長い黒髪と貞子という名がぼくの弱点になっています。とりわけ目に見えない得体の知れないものに襲われると、もうあきまへん。学生時代、『エクソシスト』(1973年)を観て以来、電車に乗ると、乗客の首が360度回るという恐怖心を植え付けられました。スティーヴン・キング原作の『シャイニング』(1980年)では双子の女の子に対してトラウマが……。

本作の「あれ」も正体を現しません。なんとも難儀な映画なので、試写をパスしようと思ったのですが、この原稿を書くために勇気百番、スクリーンと向き合いました。ところが、あら不思議、最後まで目を瞑らずに観ることができたのです。なぜかと言うと、あまりにもシュールな世界だったからです。怖さを通りすぎていましたわ。

会社員の田原秀樹(妻夫木聡)と香奈(黒木華)が結婚し、女の子の知紗が生まれてから、自宅マンションの部屋が荒らされたり、会社の同僚が原因不明の病で死んだりと次々に摩訶不思議なことが起こり始めます。「あれ」が来るのです。あくまでも、「あれ」です。「それ」にすると、『IT/イット』(2017年)になってしまいますがな。まぎらわしい。

前段として、秀樹が幼いとき、森の中で行方不明になった女児から「怖い誘惑」を受けるという伏線があります。悪いことをしたり、ウソをついたりしたら、さらっていく「ぼぎわん」というお化けの存在。「あれ」はそうなのでしょうか? 現在と過去が交錯し、あのときの女の子がなにか絡んでいるのではないかと思わせるところがホラーっぽいですね。

この秀樹、実に調子のええ男です。子育て日記というブログを立ち上げ、模範的な「イクメンパパ」ぶりをアピールするのですが、内実はすべて妻まかせ。外面がいいというか、目立ちたがり屋というか、とにかく自己中。やっかいですよ、こんな男。こういうタイプの人物を演じさせたら、妻夫木君の右に出る者はいないですね。軽妙さが抜群です。

この辺りでぼくの頭の中に疑問符が浮かんできました。主演の岡田准一がいっこうに登場しないからです。まさかこのままずるずるいくのではと危惧していたら、ようやく姿を見せてくれました! それもなにやら胡散臭い野村和浩というオカルトライターの役で。こんなややこしい岡田君、見たことありまへんわ。しかも真田広之の若いころとそっくり。こう思った時点で、すでに怖さとは無縁状態になってきつつありました。

その野村を紹介したのが、秀樹の高校時代の友人で民俗学者の津田大吾(青木宗高)。関西訛りで話す、これまたややこしい感じの男です。岡田君も、青木君も、黒木さんもみな大阪出身。それを活かし、彼ら3人が大阪弁で喋ったらオモロイと思ったのはぼくだけでしょうか。そんなことしたら、ホラーからコメディー路線に変わってしまいそうですね。中島哲也監督はさすがそこまでイチビリませんでした(*イチビルは「ふざける」「おちょける」という意味の大阪弁)。

野村の彼女っぽい比嘉真琴(小松菜奈)はキャバ嬢をしている霊媒師。彼女は秀樹の家族を襲う「あれ」を退治しに行くのですが、残念ながら、霊力が弱い。そのうち日本最強の霊媒師といわれる姉の琴子(松たか子)が現れ、いよいよ「あれ」と一騎打ち。この琴子、「リング」の貞子によく似た黒髪で、最もぼくの苦手とするタイプです。しかも色白でか細い声。こんな女性ににらまれたら、金縛りに遭いますわ。

物語は想定外の方向へと展開していきます。気が付くと、秀樹から野村に主役が変わっていました。やっぱり岡田君が主演で間違いなかったです。「あれ」のパワーが増大し、何人かが惨たらしく命を落とします(誰とは言いません!)。ここで、「なんで警察が出てけえへねん。捜査本部を置かなあかんやろ」と憤っても意味がありません。とにもかくにもシュールな話なのですから、現実から目を背けることが肝要です。

クライマックスがすごかった。神道の神主、密教の僧、修験道の山伏、沖縄の祝女(のろ)、韓国の巫(かんなぎ)といったシャーマニズム的な要素の強いキャラクターが一堂に会します。ここまで出すのなら、『エクソシスト』で実績のあるキリスト教(カトリック)の悪魔払いも呼んできたらええのにと思ったりします。いや、いっそのこと、ヒンドゥー教、イスラム教、クイーンのフレディー・マーキュリーが信仰していたゾロアスター教(拝火教)など世界のあらゆる宗教の聖職者が一丸となって、「あれ」と対峙してほしかった。賑やかしになってええ塩梅やと思うのですが、こういう発想、不謹慎ですかね……。

「あれ」は何だったのかを考える前に、主要な登場人物はみな、表と裏の顔を見せてくれました。秀樹はその最たるもので、良妻賢母である妻の香奈は毒婦的な面を覗かせ、クールに振る舞う野村はおぞましい過去を引きずっており、飄々とした津田も実はスケベ男であり、ケバケバしい真琴は母性愛豊かな女性といった具合にまったく異なるキャラを潜ませていました。

こう見ると、「あれ」は心の闇を顕在化させた妖怪のようなものであり、同時に人の素顔を暴くもののようにも思えます。あと3回ほど観たら、「あれ」の実像がわかってくるかもしれません。多分、観ないでしょうけど。というわけで、娯楽映画としてはよくできていましたし、冒頭から最後まで飽きさせなかった中島監督の演出力は高く評価したいです。ただ、1つやっかいなことがあります。緑の幼虫を見ると、ギャーッと叫んでしまいそうな気がしてならないのです。

12月 09

韓国の骨太な社会派ドキュメンタリー映画『共犯者たち』&『スパイネーション 自白』

こんな骨太なジャーナリストがお隣の韓国にいるとは知らなかった。

政権批判の報道をしたことで不当解雇された公営放送局MBCのプロデューサー、チェ・スンホさんが独立メディア「ニュース打破」を立ち上げ、政権に寄り添って〈広報機関〉と化した放送局に容赦なくメスを入れていきます。

この人がメガホンを取り、その様子をあますことなく伝える社会派ドキュメンタリー映画『共犯者たち』が大阪・十三の第七藝術劇場で公開中です。

脱北者を「北朝鮮のスパイ」として拘束するおぞましい現実にチェ・スンホさんが迫る『スパイネーション 自白』も上映されています。

『華氏119』のマイケル・ムーアも真っ青になるほどの不屈の精神で、アポなし突撃取材を敢行し、政権のメディア介入や言論弾圧の実態を暴いていく過程が何ともスリリング。

この人、1年前にMBCに復職し、何と社長に選任されました!!

『タクシー運転手 約束は海を越えて』や『1987、ある闘いの真実』などジャーナリズムの本質を突く映画を連発している韓国ですが、日本ではこの手の映画が皆目作られませんね。

マスコミ関係者、メディア研究者、社会派映画に関心のある人は必見ですよ。

12月 05

Otomo!「大阪ストーリー」のエッセー、『「昭和」の大阪へタイム・トラベル』

今回は身内話で申し訳ないのですが……。

13年前、85歳で黄泉の客人となった父親は、ぼくの生家でもある大阪市東区(現在の中央区)龍造寺町の長屋で印刷業を1人で営みながら、一時期、アマチュア・カメラマンとして大阪の街と人を活写していました。

撮影期間は昭和28年ごろから東京オリンピック開幕の昭和39年までの10余年間です。

現存する写真の中から30数点を、大阪市立中央図書館で『あゝ、懐かしの大阪~昭和30年代の息吹~』(9月21日~10月17日)と題して展示させていただきました。

その中でぼくのお気に入りの写真が3点あります。

そこに写された場所が現在、どうなっているのか。

それを知りたくて探訪してみました。

1つ目は、昭和28(1953)年に撮影された旧関西電力春日出第二発電所(此花区西九条)です。

安治川と六軒家川が交わるところに建っていた巨大な石油火力発電所。

天空に伸びる8本の煙突が際立っており、見ようによって本数が変わるので、「おばけ煙突」と呼ばれていました。

大正10(1922)年、大阪電灯会社が建設したこの発電所は昭和34(1959)年に運転停止となり、建物が撤去されました。

なので、ぼくの記憶にはありません。

写真は安治川をはさんで対岸の港区波除から撮影したものです。

発電所は圧倒的な存在感を見せていますね。

手前の船は安治川を運航していた「三丁目渡し(渡船)」です。

これは昭和64(1989)年に廃止されました。

撮影場所は写真の情報からすぐに特定できました。

Osaka Metro中央線の弁天町駅から国道43号線沿いに北上し、安治川大橋の手前を右折したところです。

撤去された発電所跡に新たな火力発電所が建造されたのですが、それも平成15(2003)年に取り壊され、今はホームセンターになっていました。

まさに隔世の感……。

かつての渡船乗り場が建設工事中だったのが残念でした。

2つ目は「おもちゃの町」として知られる松屋町(中央区)で、玩具と駄菓子を仕入れる人の様子をとらえた写真です。

「松屋町」を「まつやまち」と言う大阪人はいません。

「まっちゃまち」です!

撮影された昭和35(1960)年当時、駄菓子屋のおばちゃんは風呂敷包みを背負っていたんですね。

時代を感じさせられます。

コマ、塗り絵、スポンジ状のキングボール……、懐かしの品々に涙が出てきそうになります。


      

この場所がはっきりわかりません。

とりあえずOsaka Metro長堀鶴見緑地線の松屋町駅で下車し、松屋町筋の西側舗道を北へ向かいました。

人形、スポーツ用品、花火、玩具の店が軒を連ねています。

300メートルほど歩いたところにレトロな雰囲気の玩具・お菓子店があり、心がときめきました。

   
「まだこんな店があるんや!」

この辺り、ぼくの小学校時代のテリトリーでした。

あのころ松屋町筋はこんな店舗ばかり。

下校途中、しょっちゅう店頭を冷やかし、店員さんから「銀玉鉄砲の玉ぐらい買ってよ」と言われていました(笑)。

その店に吸い込まれるようにして入り、初老の店主に「これ、どこかわかりませんか?」と写真を見せました。

「当時、アーケードを付けてたんはうちの近所だけですねん。これ、うちの店ですわ! 2人のおばちゃんが喋っているのは店の前ですな」

えっ! あっけなく判明しました! 

ほんまにびっくりしました。

やっぱり現場を踏まなあきませんね。

古い写真の松屋町筋の方が広く感じられるのは、通り沿いの建物が低かったからそう見えたのでしょう。

何はともあれ、58年前に撮影された店が今も健在であるのがたまらなくうれしかったです。

気分よく、松屋町筋を南へと逆戻り。長堀通を通過し、さらに千日前通を越え、しばらく歩くと、左手(東側)に目的地がありました。

源聖寺坂(天王寺区)です。

上町台地の西側にある「天王寺七坂」の1つ。

坂の入り口に浄土宗の源聖寺があるので、その名が付けられています。

昭和35年に撮影されたこの写真、構図が大好きなんです。

カゴを背負う右手の男性と坂の傾斜が絶妙なアンサンブルをかもし出しています。

服装と日差しから察すると、夏に撮られたのでしょうね。

左手の「旅館」の看板が気になりますが……。

石畳の坂をゆるりゆるりと上っていくと、途中から石段に変わります。

あと少しで上り詰めるところで立ち止まりました。

そこが撮影ポイントです。

現在、旅館の場所には一戸建て住宅が並び、右側の木造家屋は取り壊されて墓地になり、電柱の位置も変わっていました。

しかし左へ緩く曲がる坂の風情は変わっていません。

たまたまカップルが横を通りすぎたので、許可を得て撮影させてもらいました。

右手の住宅へ入ろうとした買い物帰りの主婦に父親の写真を見せると、えらい懐かしんではりました。

「うちの家、昔は旅館やったんですね。知らなんだ。昔の方が風情がありますね」

もう一度、撮影ポイントに立ちました。

約60年の時の隔たりを経て、今、息子のぼくがおなじ場所でカメラのファインダーを覗いている。

そう思うと、急に感慨深くなり、目頭が熱くなってきました。

被写体の今昔……。

たしかに見た目は変わっていました。

しかし、どんな時代であっても大阪の空気は永遠に不滅なんや。

それを実感させてくれた「タイム・トラベル」でした。

12月 03

ジャジャジャーン、今年の映画ベストテンの発表です~(^_-)-☆

2018年 映画ベストテン

【日本映画】

1 『孤狼の血』監督:白石和彌 役所広司、松坂桃李、真木よう子

2 『日日是好日』監督:大森立嗣 樹木希林、黒木華、多部未華子

3 『ごっこ』監督:熊澤尚人 千原ジュニア、平尾菜々花、優香

4 『菊とギロチン』監督:瀬々敬久 木竜麻生、東出昌大、韓英恵

5 『オー・ルー・シー』監督:平栁敦子 寺島しのぶ、南果歩、ジョシュ・ハートネット

6 『ハードコア』監督:山下敦弘 山田孝之、佐藤健、荒川良々

7 『飢えたライオン』監督:緒方貴臣 松林うらら、水石飛夢、筒井真理子

8 『沖縄スパイ戦史』監督:三上智恵、大矢英代 *ドキュメンタリー

9 『斬、』監督:塚本晋也 池松壮亮、蒼井優、塚本晋也

10 『教誨師』監督:佐向大 大杉連、烏丸せつこ、玉置玲央

【外国映画】

1 『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』〈米〉監督:スティーヴン・スピルヴァーグ
       メリル・ストリープ、トム・ハンクス、サラ・ポールソン

2 『スリー・ビルボード』〈米〉監督:マーティン・マクドナー
       フランシス・マクドーマンド、ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェル

3 『フロリダ・プロジェクト』〈米〉監督:ショーン・ベイカー
       ブルックリン・キンドリー、プリンス、ブリア・ビネイト、ウィレム・デフォー

4 『判決 ふたつの希望』〈レバノン・仏)監督:ジアド・ドゥエイリ
       アデル・カラム、カメル・エル・バジャ

5 『デトロイト』〈米〉監督:キャスリン・ビグロー 
       ジョン・ボイエガ、ウィル・ポールター、アルジー・スミス

6 『ボヘミアン・ラプソディ』〈米〉監督:ブライアン・シンガー
       ラミ・マレック、ルーシー・ボイントン、グウィリム・リー

7 『シェイプ・オブ・ウォーター』〈米〉監督:ギレルモ・デル・トロ
      サリー・ホーキンス、マイケル・シャノン、リチャード・ジェンキンス

8 『女は二度決断する』〈独〉監督:ファティ・アキン
       ダイアン・クルーガー、デニス・テシット、ヨハネス・クリシュ

9 『タクシー運転手 約束の海を越えて』〈韓国〉監督:チャン・フン
       ソン・ガンホ、トーマス・クレッチマン、ユ・ヘンジ

10 『希望のかなた』〈フィンランド〉監督:アキ・カウリスマキ
       シェルワン・ハジ、サカリ・クオスマネン、イルッカ・コイブラ

12月 01

寄り添って生きる「父と娘」、掘り出し物の大阪映画~『ごっこ』

『永い言い訳』や『万引き家族』など疑似家族を描いた映画には社会の闇にメスを入れた作品が多い。

本作はその最たるもの。

不安定な日常を生き抜く「父娘」の儚げな姿に胸が衝かれる。

大阪を舞台にした濃密な2人劇。

、(C)小路啓之/集英社 (C)2017 楽映舎/タイムズ イン/WAJA

原作は46歳で早世した大阪出身の漫画家、小路啓之の同名作品。

それを熊澤尚人監督が心理描写にこだわり、丁寧に映画化した。

家に閉じこもる40歳目前の無職の男、城宮(千原ジュニア)が全身、傷だらけの5歳の娘(平尾菜々花)を救出したことが事の発端。

2人は「パパやん」、「ヨヨ子」と呼び合い、一緒に暮らし始める。

、(C)小路啓之/集英社 (C)2017 楽映舎/タイムズ イン/WAJA

世間的には誘拐犯と被害者の関係になる。

彼らはしかし、心の拠り所として、唯一無二の存在として父親と娘を演じ、やがて素で触れ合うようになる。

実の親から虐待を受けていたであろうヨヨ子は過去を一切語らず、謎めいている。

そんな娘に人とのコミュニケーションが苦手な中年男がぎこちなく父性愛を注ぎ込む。

その健気さが何とも痛々しい。

、(C)小路啓之/集英社 (C)2017 楽映舎/タイムズ イン/WAJA

城宮の父親が残した帽子店での清貧な暮らしぶりは社会から孤立する弱者の象徴である。

そこに育児放棄、年金不正受給、引きこもり、いじめ、虐待などの社会問題を絡め、現実の厳しさを突きつける。

、(C)小路啓之/集英社 (C)2017 楽映舎/タイムズ イン/WAJA

うら寂れた商店街の佇まいが作風にぴったり合っていた。

残念なのは撮影が大阪ではなく、全て関東圏で行われていたこと。

空気感が違う。

ぜひとも「現場」で撮ってほしかった。

2人の生活がいつどんな形で終焉を迎えるのか。

常にそのことを意識させられる。

ヨヨ子の全貌が明るみに出る意外な結末にほのかな希望が見え、安堵した。

鬼気迫る演技を披露した千原と子役ながら堂々たる存在感を示した平尾。

、(C)小路啓之/集英社 (C)2017 楽映舎/タイムズ イン/WAJA

息の合ったコンビが稀有な家族ドラマを生み出した。

1時間54分 

★★★★(見逃せない)

☆12日1日からシネ・リーブル梅田、京都・出町座で、15日からシネ・リーブル神戸で公開。

(日本経済新聞夕刊に2018年11月30日に掲載。許可のない転載は禁じます)

11月 29

映画カルチャーの打ち上げでした~(^_-)-☆

今宵は、天六(天神橋筋六丁目)のブックカフェ「ワイルドバンチ」で、淑女の皆さまと打ち上げでした~🍷🍻

春から夏にかけて、関西大学梅田キャンパスで開かれた映画講座「シネマ・パラダイス」(大阪よみうり文化センター)の受講生の方々。

講座の最終日、昼間に打ち上げをしたんですが、やっぱり物足りなくて(笑)、「夜の部」の開催と相成った次第です。

今年の映画ベスト作品を発表したり、映画談義その他の話題に花を咲かせたりとえらい盛り上がりました~⤴⤴

11月 28

ちょかBandビッグライブのフライヤーで~す~(^_-)-☆

ちょかBand第8回ビッグライブのフライヤー、完成しました❗

今回も盟友である堺のデザイナー、樋口恵介さんが素晴らしい図案を考えてくれはりました。

この人の感性は鋭い❗

ただモンやおまへん。

8回目なので、エイトマン。

ヤング諸君、わかりますか?(笑)

でも、実体はエイトマンならぬ、チョカマンです~😁

原点に戻り、基本、2人でステージを務めさせていただきます。

ノリのいい新曲を披露します~(^^♪

何はともあれ、来年1月27日(日)、目一杯、弾けますので、ご参集のほどよろしゅうお願いします~🎵

11月 19

戦時中の国策映画『阿片戦争』(1943年)を観て……。

今宵、非常に興味深い映画をDVDで観ました。

なぜDVDかというと、戦時中の1943年(昭和18年)に公開された日本映画だからです。

先日、古い映画マニアのK氏からもらったものです。

題名は『阿片戦争』(東宝、牧野正博監督)。

清朝時代の1840年、英国が中国に密輸していたインド産の阿片を官僚の林則徐が全面禁止したことから紛争(アヘン戦争)が起き、英国が勝利して香港を分捕った史実を描いたスペクタクル大作です。

この映画は当時、香港を占領していた大日本帝国による国策映画として製作されました。

中国人と英国人を日本人俳優が扮し、すべて日本語で喋っています(笑)。

日本人俳優が演じる英国人の外交官と将校

23歳の原節子と19歳の高峰秀子演じる中国人姉妹が翻弄されるところがミソ。

中国人娘に扮する原節子(左)と高峰秀子が初々しい

大英帝国=悪の加害者、清国(中国)=善の被害者。

非常に分かりやすい構図です。

林則徐役の二代目市川猿之助はまばゆいばかりのヒーロー!!

確かにあのころ帝国主義の先兵だった大英帝国は好き放題にやっていましたね。。

英国と戦っていた日本人からすれば、この映画は「英国憎し」の感情を植え付けるには格好の作品だったと思います。

国策映画ってこういうことなんですね。

結局、日本は大英帝国の後を追うような形で他国を土足で踏みにじっていった……。

こういう映画が製作されない時代であってほしいと改めて思いました。

11月 17

娘の脳死、両親の決断……『人魚の眠る家』

Ⓒ2018「人魚の眠る家」製作委員会

臓器移植が絡み、揺れ動く親の心情。

そこに科学技術が介在してくる。

生命倫理と愛情の狭間で生じる極めてシリアスな問題をミステリー・タッチで描き上げた。

原作は作家、東野圭吾の同名小説。

Ⓒ2018「人魚の眠る家」製作委員会

IT機器メーカーの社長、和昌(西島秀俊)と妻の薫子(篠原涼子)には来年、小学校に入学する娘の瑞穂がいる。

ある夏の日、彼女がプールで溺れ、脳死と判定された。

21年前、日本で臓器移植法が制定され、脳死体から心臓、肝臓などの臓器が摘出できるようになった。

しかし長年、心停止を死と認識してきただけに、脳死を理解できない人が多い。

この夫婦も同じ。

あまりに突然のことで動揺する中、医師から臓器移植を打診される。

体が温かく、眠っているようにしか見えない娘が死んでいるとはどうしても思えないのだ。

物語が動くのはこのあと。

和昌の会社の研究員(坂口健太郎)が最先端の医療技術を瑞穂に応用するのである。

それは脊髄に直接、電気信号を送り、筋肉を動かすという装置。

Ⓒ2018「人魚の眠る家」製作委員会

娘が生きていると信じ込む薫子の言動が家族内に猛烈な軋みを生み出す。

妻の気持ちを分かろうとするも、ブレーキをかける夫。

そのうち研究員が全能の神のごとく振る舞い始める。

Ⓒ2018「人魚の眠る家」製作委員会

各人の価値観がぶつかり合う自宅の居間がまるで「戦場」のように見える。

何が正しく、何が悪いのか、そんな単純に答えを出せないデリケートな世界を堤幸彦監督が密室劇として濃密に構築した。

篠原の熱演には圧倒された。

Ⓒ2018「人魚の眠る家」製作委員会

眠り続ける娘に注ぎ込む母性が尋常ではなかった。

眼力のある演技。

間違いなく彼女の代表作になるだろう。

究極の決断に向かって加速度的に突き進んでいく家族ドラマ。

死生観を考えさせられる深い一作だった。

1時間37分 

★★★★(見逃せない)

☆大阪ステーションシネマシティほかで公開

(日本経済新聞夕刊に2018年11月16日に掲載。許可のない転載は禁じます)

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